大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。漫画、小説、修行の旅が混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。

書き物

深夜回診11

(続き) 前回「深夜回診10」 ホラー思考実験 「医療サービスの現場で、責任を回避しつつ利用者のニーズに合わせるとどうなるか?」をホラー作家が思考実験してみます。 ( ※ ホラー作家だから最悪のシナリオを想定します。) ”…病院の機能や医者の能力を数値化…

冥王星島22

柳浦二丁目の千里眼 (後) (続き) 私は学校を出てからずっと本土で働いている。忙しい生活の合間に昔を思い出すことが増えた。仕事で関西を通過する機会があったので、そこにいる姉と食事をすることにした。

冥王星島21

柳浦二丁目の千里眼 (前) 下の兄が千里眼で、集落内では有名だった。失せ物を当てることができたので、時々近所の海女さんなどが海のものをお礼に持って来たのを覚えている。

深夜回診10

いい医療とは何か。人によって違いますが、その社会の全体的なコンセンサスはそこに暮らしていると分かります。ここでは、それは良し悪しがデータで判断でき、自分が他の人より損することなどあってはいけない医療です。人生でもそうです。自分の人生の価値…

深夜回診9

血友病のIさんは私と同い年でした。血友病は重症になると血が止まりにくくなるため凝固因子製剤を週に3回ほど注射します。自分で打ちます。私は注射が嫌いで自分で打つのなんかもっと嫌です。あるとき私が大変ですねと言うとIさんは、「いいえ、注射薬ができ…

深夜回診8

(続き) 正月明けにやって来た、Sさんの親戚は立派な「普通の人」でした。 県内といってもほとんど県境の町から、何時間かかけて来院しました。田舎の主婦、もしくは子育てが一段落して仕事を再開した地方の事務員という印象の中年女性です。 いきなりの話に…

深夜回診7

(続き) じつはそうスッキリいったわけではありませんでした。 はじめのうちは食わせろ食わせろ言ってたSさんもしだいに食の欲求が失せ、嚥下リハビリを受けるのも起こされるのも邪魔くさそうになり、うとうと眠っていたがるようになった頃です。探偵のよう…

深夜回診6

(続き) とまれSさんは、むくまない程度の少ない点滴(医療安全パトロールよけ) だけで、数週間後にうたた寝でもするように死にました。 死ぬ数日前はいろんな幻覚が見えます。末期の人の85%の人に幻覚がみられるというデータがあります (Arch Intern Med.2000…

深夜回診5

(続き) まず参考になるのはSさんです。86歳。本人によると身寄りなく好きなようにして1人で生きてきました。一人暮らしで、買い物も家事もこなしていました。要支援制度を使い、ケアマネージャーがついています。かかりつけ医はありません。2ヶ月前から食…

深夜回診4

(続き) 一方、明らかにこのまま安らかに死なせてやるべきであろう患者に、家族から延命蘇生処置を強要され、仕方なく目を背けながら処置しなければならない時、"辛いが仕事だから仕方ないのだ…" と悲劇の被害者ぶる医療者もおります。一寸待ってください。…

深夜回診3

(続き) 病院なのだから治療するのが当たり前じゃないか、で問題なかった時代は去りました。寿命以上に生存する人の多くは老人病院などの施設から異変に気付いた職員に付き添われて運び込まれます。このとき大事なのはどこまで治療するかということです。21…

深夜回診2

(続き)難しいのは、誰が悪いというのではないことです。Tさんは話ができた頃に、さっぱりした自立心のある人格という印象を受けました。家族はTさんに愛情をもち、医療者のことも気遣ってくれます。看護師たちは細かいケアをしてくれます。足りなかったのは…

深夜回診 1

40歳(※)になったらみんな、自分自身で引き際を決める訓練を始めましょう。治るチャンスを逃すかもしれない、治療の手を抜かれるかもしれない、というインパクト不明のリスクの大きさと、自然に死ぬことができないという現に存在するリスクの大きさを比べまし…

冥王星島 20

箱尾地方の風習 (下) 面白半分に魔物を警戒するふりをして門柱の陰から街道を左右伺い、さっと道を渡る。変な物を見ないように、集まることにしている家へ小走りする。さあ、やる事のない人が集まった先では噂話だ仕事の愚痴だ言葉のゲームだなどして過ごす…

冥王星島 19

箱尾地方の風習 (中) 冬至には、その日までにきちんと掃除した屋内で、数多い器に準備したご馳走をお供えする。翌日のための準備もあるのでこの日はどの家も忙しく、お客は来ない。お供え物には手をつけてはいけない。その日の夕飯は遅い時間に にしんそばで…

冥王星島18

箱尾地方の風習 (上) まいとしその日はだれでも仕事は正午で終わることになっている。それは冬至の翌日だから崎羽の山奥は風が気化した氷のように冷たい。同僚たちは仕事が終わって帰らなければならないのが少し落ちつかないとみえて、紙の束を紐で綴じたり…

冥王星島17

斜面を ヤギが雪をけたてて降りてくる。拙い足取り。今年生まれのヤギだろう。重い雨戸は数日前にきれいに掃除したので滑りよく開く。その瞬間に日光とともに雪の匂いが本格的に吹き込んできた。暗い部屋で目覚めた時、布団の縁にひんやりと突き出した鼻先に…

冥王星島16

先輩の帰郷 (下)その家は灯りがついていなかった。仕事から帰っていないのだろう。西の空の朱味はとうに消え去りまるで深夜の暗さではあるが、時刻はまだ6時にもなってない。誰もが休みになる本物の祭と違い今日は平日だし、しかも祭が近づいてきてその人が…

冥王星島14

先輩の帰郷 (上)冬に最大のお祭りがある。夏祭りでも秋祭りでもない。それは年の押し迫った頃だ。奇祭というほどではないが、その日は仕事も学校も休みになる一番の関心ごとだ。しかしここ、丹前町では事情が違う。

冥王星島13

夜中よく目がさめる。随分たったかと思うのにラジオ番組の進み具合からすると数分寝ただけだった。不眠症とは思わない。子供の頃からそうなので、作にとってはこれが夜というものだった。 夜半、意識の焦点は変容する。囚われることはない。毎回 夜が明け闇…

冥王星島12

コロ太は君枝の店で分けてもらったおかずを弁当にしてブラブラ揺らせながら、大粒の白砂が散らばる舗装道路を歩いている。サンダルが砂でちくちく心地良い。海が近い9月の午後4時。

冥王星島11

灰色で表面がごりごりしているブロック塀に、ちょうど目の高さに蝉の抜け殻がとまっていた。火曜日の夕方に秋が来た、と思ったくらいだから、随分長く引っかかっている。体が中で溶けてまた変わっていくのはどんな気持ちだったろう。その夜 杵島篤子は薄い夏…

冥王星島10

冥王星島10 中学校でさちは毎日下駄箱の上に乗っていた。 下駄箱と天井の間のスペースは身を屈めてやっといられるくらいで、ちょうどよい。8時40分に本鈴が鳴って担任の山賀先生が玄関を通って行く時、足をとめないまま下駄箱の上のサチを目で確認する。さち…

冥王星島9

さんぞうが犬のヒロシをつれて半分木陰になっている石の階段を降りてきた。図書館で意地悪をされ本を借りずに飛び出して来た。ちょうどまひるで暑かった。この階段は寺を抜けて家に帰る近道だった。ところが階段が本堂の裏から敷地に入る境の石垣の上に、境…

冥王星島8

山裾のあたりは道が古くて入り組んでいる。公道か私道か分からない。いつの間にかよその庭に道が溶け込んでいたりする。地区の中心となる太古の神社は、その屋根はどこからもよく見える。だからと言って直接それを目指しても辿り着けるものではない。 少し離…

冥王星島6

低い山の中腹までは人家がある。その社員寮は高い所にあるので、周りの建物はまばらで空き家も多い。 ピンク色のようなクリーム色のような、三階建てのコンクリートが木々に隠れている。一階は葉っぱに遮られて路地からは見えないが、二階と三階の手すりには…

地中海家族のお弁当

浜辺に出る幅の広い階段は木とコンクリートでできている。木の部分は明らかにその上に座ったり寛いだりすることを予想されたデザインだったので、行儀が悪いかもという抵抗感なく階段でのびのびできた。二段下に3人が座っている。

冥王星島5

本島を朝一番に船が出るのは7時前だ。こちらの港には7時38分に着岸する。階田さんの婆さんは新聞と小物を売店に運ぶために、本島から毎朝やってくる。婆さんは売店に品物を置くと、東の浜を手早くパトロールして、岬の突端にある染野の庭先に来るのが8時24分…

冥王星島4

近所の藪医者に言われて大きい病院を訪ねて来た。藪医者は病院で見せる手紙を書いて彼に渡したとき、わたたにがそれをちゃんとポケットに入れるのをじっと見張った。それで彼は、あ、これは捨てたりせずに本当に病院へ行かきゃならんのだな、と分かった。船…

冥王星島3

オオタニワタリは 大人の肘から先ほどもある大きな薄い葉で両端がクルクル巻いて繁る。刻んで炒めれば全部食べられる。硬いわりにあくがない。春から夏の終わりまでは若芽が大量に取れるのでわざわざ硬い葉を食べることは少ない。若芽は柔らかくほとんど生で…