書き物
12. 幽霊
11. 安達ケ原
10. 十五夜の歌作発表
9.宇宙コンパス
8. 柿配り
7.羽の世話
7. ピーマン疑惑が浮上する晩夏の宵。 わたしの小間使いは、山を越えて来ます。電車だから、山をくぐって、です。山向こうでは夕方に道端で「露地物の農作物」を売る商人がおります。場所はスーパーのチェーン店前の道、時刻は夕方です。なにかと適切でない…
6. 私達のハーブの歴史は浅い。それは3ヶ月です。
5. 夏の二重螺旋茶
4.祭り 眼下では夕闇にきらめく血管腔を、色とりどりの血球がすったもんだして何とか流れている。わたしとわたしの小間使いはベランダから乗り出してお祭りを見ました。
3. 冷蔵庫を開けると 丸型標本瓶があった。麦茶が欲しかったのに。ホルマリンは管理の規制が厳しいのに。そんな勘違いするのは0.3秒です。中身は食品。
2. 月曜日、箪笥を半分に切った。高さをです。服が少なく引出しがガラガラだった。9段の引出しが5段になるように切りました。コーナンで買ったのこぎりで。
1. 私の小間使いは今、餡に凝っている。小豆の甘い餡ではなく、だしとかを澱粉でトロとさせる餡です。ご飯にかかっているのをどこかで見てインパクトを受けたらしい。
(続き) 前回「深夜回診10」 ホラー思考実験 「医療サービスの現場で、責任を回避しつつ利用者のニーズに合わせるとどうなるか?」をホラー作家が思考実験してみます。 ( ※ ホラー作家だから最悪のシナリオを想定します。) ”…病院の機能や医者の能力を数値化…
柳浦二丁目の千里眼 (後) (続き) 私は学校を出てからずっと本土で働いている。忙しい生活の合間に昔を思い出すことが増えた。仕事で関西を通過する機会があったので、そこにいる姉と食事をすることにした。
柳浦二丁目の千里眼 (前) 下の兄が千里眼で、集落内では有名だった。失せ物を当てることができたので、時々近所の海女さんなどが海のものをお礼に持って来たのを覚えている。
いい医療とは何か。人によって違いますが、その社会の全体的なコンセンサスはそこに暮らしていると分かります。ここでは、それは良し悪しがデータで判断でき、自分が他の人より損することなどあってはいけない医療です。人生でもそうです。自分の人生の価値…
血友病のIさんは私と同い年でした。血友病は重症になると血が止まりにくくなるため凝固因子製剤を週に3回ほど注射します。自分で打ちます。私は注射が嫌いで自分で打つのなんかもっと嫌です。あるとき私が大変ですねと言うとIさんは、「いいえ、注射薬ができ…
(続き) 正月明けにやって来た、Sさんの親戚は立派な「普通の人」でした。 県内といってもほとんど県境の町から、何時間かかけて来院しました。田舎の主婦、もしくは子育てが一段落して仕事を再開した地方の事務員という印象の中年女性です。 いきなりの話に…
(続き) じつはそうスッキリいったわけではありませんでした。 はじめのうちは食わせろ食わせろ言ってたSさんもしだいに食の欲求が失せ、嚥下リハビリを受けるのも起こされるのも邪魔くさそうになり、うとうと眠っていたがるようになった頃です。探偵のよう…
(続き) とまれSさんは、むくまない程度の少ない点滴(医療安全パトロールよけ) だけで、数週間後にうたた寝でもするように死にました。 死ぬ数日前はいろんな幻覚が見えます。末期の人の85%の人に幻覚がみられるというデータがあります (Arch Intern Med.2000…
(続き) まず参考になるのはSさんです。86歳。本人によると身寄りなく好きなようにして1人で生きてきました。一人暮らしで、買い物も家事もこなしていました。要支援制度を使い、ケアマネージャーがついています。かかりつけ医はありません。2ヶ月前から食…
(続き) 一方、明らかにこのまま安らかに死なせてやるべきであろう患者に、家族から延命蘇生処置を強要され、仕方なく目を背けながら処置しなければならない時、"辛いが仕事だから仕方ないのだ…" と悲劇の被害者ぶる医療者もおります。一寸待ってください。…
(続き) 病院なのだから治療するのが当たり前じゃないか、で問題なかった時代は去りました。寿命以上に生存する人の多くは老人病院などの施設から異変に気付いた職員に付き添われて運び込まれます。このとき大事なのはどこまで治療するかということです。21…
(続き)難しいのは、誰が悪いというのではないことです。Tさんは話ができた頃に、さっぱりした自立心のある人格という印象を受けました。家族はTさんに愛情をもち、医療者のことも気遣ってくれます。看護師たちは細かいケアをしてくれます。足りなかったのは…
40歳(※)になったらみんな、自分自身で引き際を決める訓練を始めましょう。治るチャンスを逃すかもしれない、治療の手を抜かれるかもしれない、というインパクト不明のリスクの大きさと、自然に死ぬことができないという現に存在するリスクの大きさを比べまし…
箱尾地方の風習 (下) 面白半分に魔物を警戒するふりをして門柱の陰から街道を左右伺い、さっと道を渡る。変な物を見ないように、集まることにしている家へ小走りする。さあ、やる事のない人が集まった先では噂話だ仕事の愚痴だ言葉のゲームだなどして過ごす…
箱尾地方の風習 (中) 冬至には、その日までにきちんと掃除した屋内で、数多い器に準備したご馳走をお供えする。翌日のための準備もあるのでこの日はどの家も忙しく、お客は来ない。お供え物には手をつけてはいけない。その日の夕飯は遅い時間に にしんそばで…
箱尾地方の風習 (上) まいとしその日はだれでも仕事は正午で終わることになっている。それは冬至の翌日だから崎羽の山奥は風が気化した氷のように冷たい。同僚たちは仕事が終わって帰らなければならないのが少し落ちつかないとみえて、紙の束を紐で綴じたり…
斜面を ヤギが雪をけたてて降りてくる。拙い足取り。今年生まれのヤギだろう。重い雨戸は数日前にきれいに掃除したので滑りよく開く。その瞬間に日光とともに雪の匂いが本格的に吹き込んできた。暗い部屋で目覚めた時、布団の縁にひんやりと突き出した鼻先に…