4.祭り
眼下では夕闇にきらめく血管腔を、色とりどりの血球がすったもんだして何とか流れている。わたしとわたしの小間使いはベランダから乗り出してお祭りを見ました。
私の家は参道に面しており、提灯を上から見下ろします。お店がずらっと出ていて、お客は多い。わたしは人混みが苦手だから、あの人たちはよくもまあ気丈に出動して客役を務めてくれるものだなぁと感心します。こまちゃんはお祭りに加わらない。毎年、カレーパンだけ買ってきます。1丁目のカレー屋が、お正月とこの日にだけに作るカレーパンを店頭で売っていて、外ガシガシ 中カレーパンパンで格別。数年前から角の駐車場でロックフェスが催されます。遅くまで…。通常大きな音を嫌いますが、これは大人しく受け入れます。私は人生でロック性を重視しているし、お世話になってる仲見世組合の稼ぎ時なのだから。がんばれみんな。明日の掃除も。
こまちゃんは若輩なので非日常の喧騒に対して不機嫌を隠さない。屋台の右側面に書かれた文字が右から左に書いてあることに文句を言うという若輩さ。きゃかい、とかかわいいやん。で私たちはベランダで梗塞気味の血管を見下ろしながら、黙ってカレーパンと紫蘇ジュースをカリカリごくごくしてるわけです。