7.羽の世話
私が住むアパートには たくさんの羽があって、それらの羽は世話が必要です。換気扇、扇風機、送風口、家電のフィルター、電子機器のファン。なぜこれらの世話に私が注目するかというと、やり甲斐です。「労力対気分的効果」比が高いのです。普通の部屋の掃除よりワンランク上の、「引っ越ししたての部屋」感が出る。清潔な部屋でも天井の換気口のシマシマに埃が揺れてると あー、と思うでしょう。じつはそれに気づかない場合の方が影響大です。認識しなくても目の端に入る汚れた羽情報は、「あの空間は埃っぽい」という印象を人の無意識下に作る種となる。
というような話をわたしの小間使は嫌います。わたしが羽洗い専用にpHを調整して薬品を自作することを正当化しているとこまちゃんは指摘した。汚れがよく落ちるのに。わたしだけが使うから安全なのに。念のために私はベランダで混合作業をしていますが、それすらこまちゃんが育てているハーブの健康に悪いと怒られました。ハーブの健康ってなんだ。
堅実なリアリストであるこまちゃんは、私が自宅内で実験的行為するのを差し止めようとします。まったくセンスオブワンダーのない人だ。ほんとにキングの姪かな? それでもわたしが真夜中に羽類を洗剤でピカピカにしておくと、翌日こまちゃんの態度がやや穏やかな気がします。私はそれを茶室効果と呼んでいます。美しい羽は人の情緒にいい影響を与えるようです。
HIコンロをひっくり返してみてください。表面は甲虫に似てツルリとかっこいいですが、腹側は甲虫に似てヒダヒダしたり、ごちゃついています。ここは煙に含まれる油が固着してて、掃除し甲斐のある部位ですよ。残念だけど私の洗剤の製造方法は秘密です。 危険だから。