11. 安達ケ原
つぎの休みに、知人がDVDプレイヤーを貸してくれて うちで映画を観ることになりました。今年になって映画館の入場料が値上がりしました。何人かとレンタルすれば数百円で観られます。映画館のポップコーンとかも高いですが、うちで湯豆腐すると安いです。自分のお酒を持ってくる人もいます。
お客を呼ぶには部屋が殺風景だと思ったので、私と私の小間使いは飾りのススキを刈りに来ました。朝の11時ごろ、最近にしては暖かく半袖でよかったくらいでした。私たちは古墳の裏にある他人の敷地内に入り込みました。しばらくすると、上空で鳥が鳴き ススキの穂が日光を反射して金色にチラチラしたりで、この世の一時的現象性を強く押し出してきたので、私は帰りたくなりました。するとこまちゃんがいませんでした。
不法侵入の時点から私たちの他に誰もいないのは分かっていましたが、戸外で大声を出すのは 躊躇を感じます。映画とかでは登場人物はすぐに独り言を行ったり、無人の空間に向かって「誰々さーん。どこですか~?あれぇおかしいなぁ?」などを衒い無く発声しますが、あれは不自然です。結局私は、自室にいる時と同じくらいの音量で「こまちゃん?」と、なんどか呼びました。ススキの背は高く、こまちゃんは姿が見えないままでした。神隠しの一例です。