019/8/21 (水) 13:00-14:30 吹田道場 吉田先生
1. 武器7回目:剣:抜刀納刀と四方投げの復習、杖:型の一部
2. 宇宙人と合気道する仲間募集中
<武器の練習シリーズ リンク>
- 1回「剣の礼 剣と杖の取り扱い基本」(稽古記録119)
- 1.5回「座礼 抜刀納刀 杖の打ち方」(稽古記録126)
- 2回「剣の正面切り・斜め切り、杖の突き左右・前受身」(稽古記録130)
- 3回「剣の運足・斜め切り組、杖の正面打・前受身」(稽古記録143)
- 4回「礼儀、剣の切返し、短棒四方投」(稽古記録154)
- 5回「正面切と斜切の前後、杖の型中段上段突きの受」(稽古記録162)
- 6回「剣の歩き抜刀納刀、swing-by, 四方投げ、杖組続き」(稽古記録167)
- (過去の武器関係記事一覧は最後にあります)
< 杖 >
1. 杖型の一部
(1) 左前中段突、(2)上段受、(3)持ち替え、(4)右横面打、(5)後ろ突き、(6)下段返し、(7)左前構え
Fig.1 (3)で持替えを完了してから、横面打ちましょう
< 剣 >
1. 抜刀納刀復習
復習なので結構素早くやって (いるふりをして) ました。が、私は自分がこんなに速く抜けないことを知っている…。のでなんか恥ずかしかったです。鞘は「答え合わせ」のようです。重力以外の縦方向の力を入れてしまったらひっかかって、「肩にチカラ入ってるで。」と教えてくれます(Fig.2)。合気道でも大東流合気柔術でも抜刀の動作はとてもよく使います。それはもちろん「抜刀の手順」ではなく、「実際に抜刀できる動作」ですから、頑張って練習 練習。公文式もひたすら解いてくだけ(手順だけ繰り返す)より、答え合わせして間違いに気付きながら進める方が効率いいですよね。
Fig.2「鞘の内側、削っちゃった!」
2. 胸取四方投復習
ちょっと入り方が変わるとややこしいです。
Fig.3 胸元を持ってもらうように構えましょう
体捌きで崩すのですが、「これが真剣だったら、Fig.3のCで受の右腕切り落とされてない?」という疑問がありました。調べているうちに、武産会滋賀道場さんのサイトで「3種の四方投げの3種の剣の操法」という 解説に行き着きました。一部引用します:
”1.相手の肩の方へ向かって呼吸力を流して行う 2.相手の手を横に引き出して行う 3.相手の手先の方向へ向かって押し出して行う ...1.は相手が浮き上がります。多少痛い時もあるようです。2.は相手が背中を見せてきます。3.は相手と横並びになります。”
筆者は徒手四方投げのやり方の違いは、その背後にある剣の使い方の違いが反映されたものであることを説明しています。体術が1パターンだけだと考えている限り、見えてこない剣の操法です。
Fig.4 1は肩詰めて吊上げるやつ? 2は腹横切りのやつ? 3は杖をぶんどっちゃうやつかな?
引き続き引用:
”1は、相手を突いてから切るような剣術、2は、横一文字に切り捌いて切る剣術、3は、真っ直ぐ大きく振りかぶる剣術が見えます......1は突いており、2は切っており、3は突いても切ってもいないのです。(引用終わり. 下線引用者)"
( 合気道武産会滋賀道場「3種の四方投げの3種の剣の操法」2017.6.24[online] https://aikido-shiga.com/keikolog/2498 (Accessed on 2019.8.22)
今回学んだのは、引用中でいうパターン3に近いようでした。「突いても切ってもいない」ケースです。手首を取られてしまったり 剣と剣がぶつかっている場合でしょうか。そうであれば木刀はつながりを意識するため、もしくは体捌きで相手を崩せているかを確認するためですから、「途中で腕切り落としちゃってる?」という心配はいらないですね。木刀を使った稽古では常に「実際に刃がついているもの」と思って稽古するようにしていましたが、それだけではなかったのだな。
■ 目的によって使い分けるために、身体原理とイメージ法の役割を分けて考える。
心を込めた礼をするとエネルギーが充実して相手は逆らえないことから、礼は大切というのがこの道場のコンセプトです。たしかに礼をしてから技をかけるとかけやすいです。さらに心の中で礼をするだけでも同じ効果です。これは誰にでも即効果が実感できて便利な説明ですから私もちょいちょい使わせてもらっています。ただし便利なものは そのlimitation (その論理が成立する範囲の条件、使用制限)をワンセットで認識するのが決まり事です。例えば礼の利用は「ただし日本文化の中では」ということになります。これを「日本語翻訳版ムック本」としましょう。もしエチオピア人に合気道を教えるなら アレンジが必要です。礼の仕方が違う。彼らに指導する場合、まあ国粋主義者なら「合気道したいなら日本文化や日本の礼から学べ」とやらかしそうですが、こいつは恥ずかしい。それより彼らの文化に沿った翻訳版を使うのが手っ取り早いです。とすると必要なのは日本語翻訳版ムック本ではなく「原本」です(Fig.5)。「日本語翻訳版ムック本」の内容をそのまま 言葉だけ現地語に訳するのではなく、原本を底本にして内容自体をアレンジされた「エチオピア用ムック版」が必要だからです。
Fig.5 川上へ川上へ、どこまでものぼってゆく。源流に近いほど臨機応変なサービスを提供できるはず。
たとえば日本式礼から期待される効果は、随意的には操作しにくい腸腰筋大腰筋を原動機にするためです。正しい礼をするとこれを使うのでそのままの流れで技を行うと良い感じで姿勢筋が使えるわけです。イメージするだけでも、その動作に必要な筋肉が準備動作をすでに始めるので「関節は動かないが筋肉への神経はスタンバイ」している。むしろ実際に収縮が始まるとエネルギーがそちらに使われるので、静止状態のほうが好ましいです。これが「イメージでのみの礼」効果でしょう。この「体の状態」は「原本」に近い。この「体の状態」になる動作で、エチオピア人が頻繁に無意識で行う日常動作をもとに説明すると、彼らにとって感覚が伝わりやすいのではないかと思います。
どちらの本がいいというわけではありません。工場の現場の人にいきなり分厚いドイツ語原本をマニュアルとして使わせるのは非効率極まりないですね。できるだけシンプルで具体的な翻訳抜粋版をつかうべきです。自分の目的に沿って、使い分けるのがよいです。
■ 宇宙人と合気道するために: 違いでなく共通点を探すゲームをしよう
群れの安全のために、未知の相手に対しては自分たちとの差異を探す習慣が私達にはあります。自分と似た集団を好まして優れていると見なし、違う集団を間違っていて劣っているものとして敵意を抱くのは本能ですから、ほっといてもやります。違いを言い立てるのはするなと言っても誰にでもできるということです。一方、共通点を探すのは意思が要ります。これからは、違いを指摘しあうのではなく、共通点を探す宇宙時代です。合気道は身体動作ですから、違う者同士の新しい共通点になりえます。国・文化・背景の異なる人に合気道を教えてうまく伝わらないとき、それは「彼らが我々日本の優れて繊細な文化を理解しない劣った連中」だからではなく、「自分の合気道の理解が浅く、彼らの文化の追求を怠っているから」と考えます。相互理解の可能性に満ちた合気道を、分離の道具にしては本末転倒です。なぜなら私は将来、異星人に合気道を伝えることを目標にしている者の1人(だけ?)だからです。
Fig.6 左: <初級>「で、前の足を…どれ?」 右: <上級> 惑星ソラリス
私はどうかしてませんよ。ファーストコンタクト物SFマニアには、切実な課題です。多くの人は信じないけど、私もまだ時間は少し残ってるし 奴らは来る時は突然だから(たぶん)、全然あり得る。そうなってから慌てないように常に準備してます。ところで中国の大ヒットSF「三体」はファーストコンタクト物の傑作でした。あなたなら異星人に どう合気道をぶつけますか?「どうだ地球にはすごいものがあるだろう?」とマウンティングするか、ともに楽しむことを目指すか。