大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

稽古記録164<上半期まとめ②>(2019/7/11)

2019/7/26(金)

     <上半期まとめ その2>

1. 正中から発する

2.軸と回転の実習

 

<上半期まとめシリーズのリンク>

 

 2. 軸と回転

2-1. 芯から軸へ

芯ができるとそれを中心に回転運動がしやすくなります。軸というやつではないかと思います。逆に回転運動自体が軸を作ることもありそうですね (Fig.9)。しかし、私に限って言うと軸を体感するのに回転を使うのは遠回りかもしれないと思いました。ぐらついてしまって芯を体感するに至らないのです。もしくは人体は柔軟で融通が利きすぎるため回転を上げる前に姿勢で調整してしまうこと、ふつうのダンスなどの回転と合気道の回転は性質が違うこと(私の仮説ですが。稽古記録151-4参照)などが原因として考えられます。私はまず芯をつくって、それを使って回転する、という順序のほうが回転の練習がしやすかったです。というか、軸ができたと喜んで人混みを歩いて遊んでいたら自然と回転し始めました。ただの向き不向きかもしれないので、回転から練習するか軸づくりからするか、各自やってみてください。 

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Fig.9 A:液体に粗い粒子が均等に混ざっている。B:液体をかき混ぜると粒子は中心に集まってきて柱になる。人体は液体袋だから、このようにできる仮説を持っていましたが、実験では証明できず。

 

2-2. 四肢は正中を経由して発する

前回触れたのように、力の放射は弾丸型に真っすぐ放出されてターゲットに向かうのが効率的です(稽古記録163 Fig.5再掲)。力の都合だけでなく、関節の都合のこともあります。千鳥足の出し方を以前話しましたが、「足をまず正中に出してから千鳥」というのも股関節の構造のためです(稽古記録160-2の Fig.2参照)。外側に振れやすい上肢はなおさら、正中発を心がけて丁度でしょう。体から出るレールは正中から一本だけ、そのあと枝分かれしていくというイメージかもしれません。

 f:id:fanon36:20190725114828p:plain (稽古記録163 Fig.5再掲)

(稽古記録160 Fig.2 再掲)

 

2-3. 逆半身で制御する

正中から前方へ出す手や足はいいとして、その反作用として正中線が引きずられるのはどうすれば安定させられるでしょうか。よく分かりませんが逆の手足で引いておくとつんのめらずに済むような経験則はあります。たまに指導員がふいに後ろ足の膝裏をコツンとすることがありますが、こうされて曲がっているようではいけません。私は曲がります。後ろ半身にこそ気を使わないとな、とそのたびに思います。で忘れます。

 

2-4.相手に正中を攻めてもらう

自分が正中に手刀を出すと受はうまいことこちらの中心を攻めてくれることが多いです。昔は受の攻め方がずれまくっていて稽古しづらいとき、いやな攻め方をするなぁ…とか思っていましたが、何のことはない自分がずれた誘い方をしていたわけです。受がおかしいとき、その原因はたいてい自分ですね。例えば以前に痛い思いをさせたから防衛としてガチガチになってしまっている受に、「そんな受け方じゃダメだ」と責めるのはお互い得るものが乏しいリアクションです。それはともかく、自分が正中に出しているつもりでも受の攻撃がずれていてやりにくいときは、足を動かせばよいですね (Fig.10)。こんなときに反射的に足が動かないのは自分側の課題です。変な受は、自分が居着いていることに気づかせてくれます。

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 Fig.10 ポジションaにいるのに変な受が中心(矢印a)でなくずれた攻め方(矢印b)をしてきたら、自分がポジションbに移動すれば中心で受けられる。

 

2-5. 意識だけ正中発

意識すると自覚しない程度に身体が動くことは知られています。大関節である股関節で実験しやすいです。上記網代の足において「ほんの少しだけ前方に出してから、千鳥に」と動こうとすると、実際はかなり大きな動きになってしまい、やり過ぎ感が出ます。「イメージでだけ前方に、実際は直接千鳥に」とやると、ほんの少し前方にふれる動作が出ます。微細な調整はあえてイメージだけに頼るのも有用でしょう。そのとき体が微細ながらも正確に動いてくれるには、やはり練習の積み重ねが必須です。

 

2-6. 因果を逆転させる繰り返し練習

自分の動きを先取りしてイメージで完了させるのはスポーツではたまに経験します。これは単なる自己暗示ではなく、繰り返し動作によってシナプスを太くしていった結果でしょう。子供のころ平均台で宙返りしていました。あれは子供の身長ほどの高さがあり怖い競技です。ところが練習を重ねると「平均台の上に着地しよう」ではなく、「自分が着地するからそこに平均台が現れる」という感覚がでてきます。だから転落はあり得ない、失敗などどうしたらできるのか分からない という気分。子供心に(これは現実とは逆だから、おかしな錯覚だな)と思った記憶がありますが、そのイメージのほうが現実より強いため恐怖はありません。大人になったいま宙返りして10cmの幅に着地するのは絶対不可能です。膨大な繰り返し練習だけが、この感覚をもたらすのでしょう。望む未来を選択するというより、もはや因果関係の逆転です。子供のころとはいえ、ああいう感覚があるのだと経験できたのはラッキーでした。合気道では別かもしれませんが、基本動作の繰り返し練習の大切さは同じでしょう。

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Fig.11 目で着地点を確認すると、できなくなる

 

正中関連だけで長くなってしまいました。次回は「胸を開くことの効果とメカニズム」です。おたのしみに。