2019/4/18 (木) 19:00-20:00 住吉道場 吉田先生
1. 深い結び:体捌き以外の要素
今まで体捌きで結んだり相手の中に入ってきました。さらに何かを追加して結び深度をUPしましょう。
※ 取=技をかける人 受=技をかけられる人
1. 深くくっつける: 胸取二教前受身
胸取りに来る手を(Fig.1 A)、体を開きながら交差ですくい(B)、肩口で二教決めして前受け身させます(D)。
ただ手を取って二教しただけだと受はまだ強く、押してこれます(E)。一方、胸取の手を取るときに「のの字(∞形)を経由して食い込むと、受の腕はたとえ肘で屈曲していても 寸詰まったようになり、屈伸したり力を入れたりしにくく感じます。「床に倒れそうだが、取との接点で突っ張ってるからなんとか耐えている(C)」ので、もうなされるがままです。この助走のようなものをつけた結び方を先生は「エンジンをかける」と表現されます。エンジンとは何でしょうか。
Fig.1 受は向こうに突き飛ばされるというより、床に潰されるかんじ
2. ナチュラルに繋がる:胸取入身投
胸取を体を開いて合気下げ、という上と同じ形のくっつき方を、今度は「自然な」動作の体捌きでやってみます(Fig.2 A)。袖についた糸屑を払うような手のひらです(B)。受が本気で掴んでくるほど崩れます(C)。あとは好きなように入身投げなど。
Fig.2 「自然」とは、「街中でやっても注目されないようなさりげない身のこなし」
受がよく落ちるということは、いわゆるエンジンがよくかかったのでしょう。しかし上記二教のような助走的動作(∞)はここにはありません。そのかわり「さりげなさ」があります。エンジンとは何でしょうか。
3. 接触点の透明化: 両手襟持合気下げ・座り呼吸法
先週にやって消化不良であった 「結んで上げるフンワリ合気上げ」(経過記録96,3-1参照)をやります。両襟を取りに来る手を、上記のさりげなさで落とします( Fig.3 A)。今後、この時の手のひらの圧を1mgも変化させないように。慎重に気をつけながら、受の腰(やや後ろ、仙骨あたり?)めがけて重心移動(B)。さらに同じ圧のままで受の拳を回転させたいのですが、ただ擦っただけだと圧のみならず感触まで変化するので受けは我に返ってしまいます。そこで、例えば先輩はこのようにしていました:
親指の付け根の一点を釘を打ったように固定(C-a.)。釘部の圧を一定に保ちつつ、釘を中心に手のひらを回し滑らせる(b)。受が認識する感触(=釘部)は不変なので、接触部分の構造が変化したことを目では見ていても脳がついていっていません。そんな時に脳にとって予想外の方向(真上など)に動かされると、「えっ?」と不意をつかれます。そうして浮いたら呼吸投げ。
Fig.3 受は自分の無意識の認識を自分でコントロールできない
先輩にかけられる時の感触は「透明な手」という感じです。 逆に、たまに自分が上手くいったようなときは、自分の手首から先を相手にくれてやったような、自分の手に対する無関心さがあったように思います。仕組みはやはり、よく分かりません。
4. エンジンとは忘我とは違う?
4-1 力みが取れた取の自然体
∞の動きは助走ではなく体の力みを取るためかもしれません。しかし私達が街をブラブラしてる時などは 労せずしてもっと力みが抜けています。意識のスイッチだけでこの状態に入り込めるならば、助走動作は必要ありません。
4-2. 自然体と忘我は似て非なるもの
何かに熱中している、ある意味自己完結的なとき、人は強いです。認知症の痩せ細ったおばあさんや、麻薬の幻覚で暴れる人などの力の強さは独特です。「人に怪我させるかも」という配慮が外れると、人はこうも強いものかと驚きます。そこまで極端な状態でなくても、極真空手 大山倍達先生が "バレリーナには気をつけろ"と仰ったように、外が見えないほど没頭している人も強そうです。配慮が無いからです。近づきたくありません。
しかし、このような怪力は、受けてみるととても不快なものです。合気下げの結びは別物でしょう。結びはむしろ真反対の気持ちをおこさせるからです。
4-3. 取は自然体である、と"受に"認識させる
また忘我では、受側に沸き起こる変化は説明できません。受(の無意識)が、取の体を含めて一体の自分であると誤解して重心を崩されていくとき、「取の自然体」以外のポイントは圧や感触、または視界に入る他人の状態などの「受の無意識への情報入力」にあるように感じます。が、まだ分かりません。もしかすると、2つのポイントは同じかもしれません。その場合、エンジンをかける とは「私は自然体(≒安全)ですよ」という誤情報を何らかの手段で相手に気づかせずに入力することを指してしまいます。ハッカー?SF的でワクワクしますね。胡散臭いですね。
しかし実際に、医療催眠ではこの手を使います。訓練を受けるとある程度誰でもできる確立された技能です(ただし日本では保険適用外)。