大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

稽古記録96 (2019/4/11)

2019/3/4/11(木) 19:00-20:00 住吉道場 吉田先生

                   <まとめ >

1.  振り子運動中の、力方向の統一  

2.振り子運動中の、力の90°方向転換の合理性

 

「振り子」運動のエネルギーを「一本通った杖」的に出力する練習です。

f:id:fanon36:20190411224554p:plain Fig.1 振り子の最高地点である左端に来た時に杖の先が最大の力を持つように見える。が… 


1. 振り子+一致した力ベクトルその1:基本動作の逆半身片手持呼吸投(下)

片手持ちさせて転換し、相手を下に落とします(Fig.2 A)。分かりやすさのために、振り子運動は上半身に加えて足も180°返します(B)。力の方向は、持たせた相手の手ではなく肘(B➡︎)。揺り戻しとともに呼吸投げ(C)。

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 Fig.2 Cは振り子で言う鉛直位置に来た時(位置0)。位置+1では遅い。




2. 振り子+一致した力ベクトルその2: 基本動作の逆半身片手持呼吸投(上段)

同様に振り子で引き込んだあと、揺り返しで縦の円を合成すると上方に返ります(Fig.3A)。持たせた手で相手を押し下げたり 逆の手で押し倒したりしなくても、相手が落ちたいルートに向かって体全体で導きます(B)。

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  Fig.3 B: 想像の杖の方向。


3. 座り呼吸法前後編: 振り子と合気(仮)

3-1. 前編:今日のやり方のベース

力ベクトルの説明のため、はじめに相手の拳を手のひらで包んで操作してみます(Fig.4 A)。相手(受)の前腕を軸として拳を外回しします(B) 。実際に操作しているのは受の手首というより、①主に肘関節での前腕の回外と、②軽度の肩甲骨ロック、③わずかな重心の後方移動です。この状態で受を後ろに押そうとしても、頑張って耐えられてしまいます。そこで、手のひらに乗せた受の拳を、真上にごく軽く弾ませると 受は腰から浮きます(C) 。浮いたら崩します。受の拳を力強く持ち上げようとすると、受は硬くなって動かなくなります。「おみかんいかが?」の程度です(D) 。 

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 Fig.4 感触は大変めずらしい

 

3-2. なぜ上方か?その1

拳を返されてから、不意に上向きに誘導されるのは意外な方向転換であり、浮かされると一瞬ポカンとなります。なぜ真上なのでしょうか。受の拳が45°返った時点での加速は確かに上方に向かっていますが(Fig.5 A)、これを利用するなら相当勢いをつけなければなりません。実際に先生(取)が行うのは、まさしくミカンを見せるような静かな動きです。振り子運動でもありません。受としてかけられた感触は、合気上げです。拳の操作によって受の重心(B★)はわずかに後ろにずれたため、取にとっての真上は受にとって「前斜め上」に相当し(B)、受の「前方に重心を戻して安定したい気分」と一致します。実感としては、自分から立ち上がってしまう感じです。受が自力で立つから、取はミカンいかが程度の力でよいのでしょう。力というより「こっちの方があなたが楽ですよ」という誘導に近いです。

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 Fig.5 A:受の拳の正面図

 

3-3. 力ベクトル以外の要素:合気(仮)

技は物理的要素と生理的要素が混然となって分かちがたいものです。ただし練習と研究に当たっては混同しないほうが便利なことが多いと思います。その目的のために当稽古会では仮の分類を利用しています(Fig.6)。上記4-2は物理的要素(いわゆる合気道)に属します。しかし試してみると、力ベクトルの調整だけでは 受は立つに至りません。先生の技を受けてみたところ、接触方法や回転運動と直線運動のタイミングなど生理的要素(感覚入力の調整 いわゆる合気)を併用されているように思われます。

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 Fig.6 合気道要素分類表(※この評価はあくまでも理解のための補助線であって、合気道の本筋とは関係ありません)


3-4. 今日のやり方の応用

今度は上記「3-1. やり方のベース」を、受の両手首を取らせる普段通りの型に適用します。はじめから気持ちを出しておいて持たせると(Fig.7 A)、受の掌は「やり方のベース」と同じように半回転します。受はやや腰が引けて取につかまってバランスをとっています(B)。取はそれ以上入り込まず、真上に浮かせます(C)。この上方移動は腕を上げてしまうと受が止まってしまうので、体で上げます。この型は、「やり方のベース」と比較すると速さがあるわけではないのですがスイング感(振り回される感じ)が強いです。それはなぜでしょうか。

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 Fig.7 押したくなるけど押さない

 

3-5. なぜ上方か?その2

Fig.1のブランコが前方に向かって最も速いのは0地点です (Fig.8 速度v)。一方、加速度は0地点で方向が反転し上方に向きます(加速度a)。

f:id:fanon36:20190412121111p:plain Fig.8 青:速度、赤:加速度

呼吸法に振り子運動を当てはめると、受ける方ははじめ取から向かってくる力(Fig.9 α)に対抗して押し返していますが、同時に取の下方ベクトルβ2に対する反作用として上向きの力がこもっています。0地点で取の力αが消えると、受は前方斜め上への力が空振りします。技を受けた実感としては自分が思わず上滑りする感じです。

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 Fig.9 理屈ではこう

 もちろんこの効果は「2人で1つの系」である場合に成り立つので、始まりから相手と結んでいることは必須です。でなければゼロ点で反撃されます。