2019/5/10 (金) 19:30-20:30 吹田道場 吉田先生
1. 意識だけで入る(はじめは一本指指しを利用)
2. 制し続ける
相手に入る動作を、少しずつ小さくしてきました。今回は、全く動かない(と 少なくとも受が感じる)まま、入る稽古です。
1. 不顕性の入り: 体位の転換
転換も、相手に入ってから行います。ただし前回(稽古記録109参照)のように受にも感じられるような、少しやられた感のある「明らかな入り」(Fig.1 A)とは別の、相手に知覚されない「不顕性の入り」を学びました。例えば手を持たせて結んだ部分は動かさず、人差し指1本で手刀を立てます。それだけなので受は動きも圧も感じず、「入られた感」がありません。これは不顕性の入りです(B)。相手に悟られない「入り」なのに、これをするとしないとでは、体位の転換の相手は違いを感じます。入りがあると抵抗できないままなぜか導かれる感じ、入りなしで動かされるとなんだか無理やりで嫌な感じ、と明らかに感触が異なります。
Fig.1 A受「あ 来た。」 B受「?攻撃して来なそうだ」
体位の転換の難しい点は、いきなり180°転換しようとすると意識が途切れてしまいがちなところです。いつもの上げ下げや斜め下、横…と少しずつ動かせる範囲を模索して広げていきましょう(C)。最終的に180°転換すればよいです。
2. 不顕性の合わせ(上下): 前受身
下に落とすのも「入る」の一種ですが、受け手に押しつぶされるような強引さを感じさせないようにしましょう。受が取の手を握ったとき、それは硬くなく 空間に固定されながら完全に緩んでいる感触で、方向性がありません(Fig.2 A)。同じ流れで落とし(B)、次に立たせて(これは引っ張るのではなく「上げ」) 前受身など(C,D)。
Fig.2 掴んでも拠り所のない手
3. 不顕性の合わせ(横): 中段突
前回にやった中段突きの横方向への捌き(稽古記録109.3)を、露骨でないやり方でやってみます。柔らかい手のひらで受の邪魔をしないように内転換し、そこから受がいきたい方へ道を開けるように退いてやります(Fig.3 A,B)。結ぶポジションは基本的にヘソ前になるように(Fig.3 ⇨)。
Fig.3 相手の反射に介入する微接触
次に外転換で捌いてみます。内転換と同じ気持ちで突きを迎えにいき、受をリードするように(C,D)。ただ受の拳を避けてターンするだけだと受は安定したままですが、このようにすると繋がります。この感覚を体位の転換でやりましょう(E)。
4. 合わせて退く
受が取を押してきたら下がってやって邪魔しないのが基本です(Fig.4 A)。しかし下がる時に受に押し込まれてしまって体勢が立て直せないことがよくあります。その原因は大きく3つあります;
① 結びが体の中心からずれている
自分を緩めた拍子に腕が脇に流れてしまった時です(D)。下がる時も剣を前で構えている時のように結びを正中線上にキープしましょう(B,C)。
Fig.4 押されるのではなく、進ませる。
② 硬すぎ・緩すぎ
緩すぎても当然押し込まれます。折れない手はきちんと作っておきます。また、硬すぎても受が警戒します。受に「あ、進めそうだ」と思わせる必要があります。
③ いつまでも下がりっぱなし
受に譲りっぱなしではさすがに入り込まれてしまいます。受を少し進ませて取に都合の良い間合いがとれたら、すかさずまた取が受に入ります。そしてまだ受がくるなら進ませ、また取が入る。この繰り返しで、あくまで主導権は取が支配しているように。受からするともどかしい感じです。剣を合わせて、間合いを保ちながら動く時の感じです(Fig.5 A)。
Fig.5 Bの姿勢は剣先が浮いてしまい相手を制することができなくなっている。
5. 言語的説明・動画・見取り稽古の適用範囲(限界)
今日の感覚は実は口頭説明できません。視覚以外の感覚を動員できる見取り稽古によってすら、分かりません。分からないにも程がある、というくらいです。無理に言語説明しようとすると気とか曖昧単語を引っ張りださざるをえなくなるので 生徒の立場であれば、実際に触って「コレだな」と知ったら あとは黙っていればよいのです。
私はこのように記録をしてはいますが、これら非言語情報は大変個人的な経験ですから他人とシェアしようとするとかえって誤解を招くリスクが、利点をときに上回ることを見込んで利用すべきです。とにかく寸暇を惜しんで自分自身の体を稽古場に運ぶことが大切です。どんなにメジャーな組織も急に倒産しうるし、どんなに若い先生でも急に消え得ます。