2019/2/4(月) 18:00-19:30 地下道場 参加4名、負傷なし
1.合気を合気道技に適用するには体を部分ごとに使えることが必要
2.重力と圧力を感じさせない接触を一瞬で作る
4カ月ぶりの稽古会でずいぶん忘れていました。合気的要素である空間・時間・認知的ズレのマトリクス(稽古記録58Fig.4参照)の復習です。(ここでいう合気的とは、受側の状態を変化させる手法のことです。対して合気道的とは取側の要素です。)
(稽古記録58Fig.4再掲)
【1】感覚入力を利用する
予測に反する触れ方をすることで受の認知スピードを一瞬遅らせることを目的としています。現実的なやり方として、「柔らかく触れる」ことです。力を抜くことは合気道ではよく語られます。ではどの程度力を抜くのか、力を抜いたら肢位が保持できない、受に入り込まれる、などの問題があります。
■ どの程度力を抜くのか
受が「接触しているのは分かるが圧がかかっていない」と感じるくらいです。エアコンの風や、虫や髪の毛が皮膚にくっついたかな?という程度です。
■ 肢位を保持できるか
受との接触面さえ脱力していればよいので、体を部分部分で使うようにします。逆に接触面以外まで脱力すると、受に寄りかかる形になってしまい余計な圧力がかかります (Fig.1) 。圧力があったとしても全方向性ならまだいいのですが、寄り掛かるときは重力方向だけに圧力がかかり、非対称性が生まれます。前回の合同稽古(稽古記録58 Fig.1参照)でやった内容ですが「方向性をなくす」ことも受に認知的ズレを引きおこす大切な要素です。
Fig.1 A: 受の左手に自分の腕が乗って重い。B: 接触面(☆)以外は「折れない手」状態でしっかりしている。
(稽古記録58 Fig.1 再掲)
受が予測したものと異なる感触を与えることができれば、ふんわり持ち以外であってもよいはずです。ヒンヤリ持ち、ペッタリ持ちなどいろいろ工夫してみましょう。
【2】合気道技にどう適用するか
■ 四方投
取は持たれた側と逆の手 (Fig.2 でいうと右手) で、受の手首を持つときにはがっしりと握らずに手をリング状にしてひっかけるような持ち方が一般的です (A)。そのリング状の手を、上記の「圧なし方向性なし」のふんわり持ちにしてみます(B) 。受を崩すのは結んだ左手で行います。ふんわり持の右手は予測外の感触刺激を入力するためだけのものなので「受を崩そう!」として指に力が入ったり、指をひっかけて引っ張ったりしないように注意しましょう。
Fig.2. ☆の部分を一定の状態に保つには、結んだ左だけで十分に受を崩せることが必要。
■ 片手持
片手持呼吸法など片手だけで捌く技では、ふんわり掌をつかうことができません。そんな時にどうやって「予測外の感触」を受に入力できるでしょうか?結んだ手首を極限ふんわりにしてみます (Fig.3) 。肘まではしっかり折れない手にしておかなければ受に押し込まれるので、結んだ部分だけ状態を変えるという部分使いが必要です。
Fig.3 ピンポイントである部分だけ脱力する
【3】スピード
速すぎたり遅すぎたりすると、せっかく予測外の感触入力によって弱っている受が我に返ってしまいます。動きの速度は自然な速度で。自然な速度とは、テーブルの上の物を取ろうとしたり 頭を掻いたりという、無意識な動きをするときの速度です。
【4】それぞれの技がもつ稽古の目的
型稽古で決められた技は、相手を倒すための手段というより、合気道習得に必要なさまざまな要素を稽古するためにあると考えます。しかし、ほとんどの場合が結局力技に堕してしまっています。とくに片手持呼吸法がそうです。受を倒すことを目標としてしまっているからです。片手持呼吸法は、「結ぶ」「自分の中心で受ける」「相手の重心を浮かせる」「誘導できる力の方向を知覚する」「腹で誘導」という基本的要素を丁寧に稽古するためのものだとすると、よくできた型です。
< Debreafing >
先週まで南米の道場を見て回っていました。一番印象深かったキュ―バの首都ハバナの道場の稽古(稽古記録62参照)について参加者に紹介しました。ハバナに来たことがある二人の日本人師範は合気会の人達だったそうですが、ハバナに伝わっている稽古内容は現在の心身統一合気道と同じでした。1990年ごろはまだ両者がまだ未分化だったと思われます。