2020/8/23 (日) 京都
1. 無意味なアレンジはないはず という前提で、意図を推測
合気道の型は、それぞれトレーニングの目的に応じてよく工夫されているよね。
現実的には無いシチュエーションから始まる型も多いです。さらにその型を、稽古の目的によって先生がアレンジすることがあります。そういうとき、「なぜ変えたのだろうな?」と考えます。するとそれらがレーニング方法として理に適っており、稽古の目的が明瞭になることが多いと感じたので書きます。サンプルは肘締めです。
1. 胸取りを横拳で持つ。
肘締めは相手に襟元を掴ませ、その肘を返す型です(Fig.1)。
Fig.1 略図
胸取をする拳は縦が普通ですが、これは横に取ります。すごく不自然ですね (Fig.2)。
Fig.2 A: 胸ぐら掴むときは普通拳は縦。B: 拳が横向きだと上衣を持ちにくい
本来ならば、胸ぐらを自然に縦持させた拳を二教取りに返そうとすれば、体全体で行うでしょう (Fig.3)。
Fig.3 足捌きと骨盤の縦回転によって胸板面を三次元的に動かして、手の内に相手の拳を落とし込む。
しかし私たち初心者は、どうしても体ではなく手で迎えに行ってしまいがちなので、脇があいてしまいます (Fig.4) 。そういう癖をつけないために、相手には横持ちしてもらうようにしているのだと思います。
Fig.4 A: 横持ちならそのまま手をかぶせてもまだ脇は緩みにくい。B: 縦持ちを無理に二教取りしようとすると脇があいてしまう。
2.肩取りでなく胸取りで
二教捕りしたところが力点、締めた肘(実際締めるのは脇だが)の接点が支点ですから、両者の距離は長いほうが梃子が働きます (Fig.5) 。そういう意味では肩取りより胸取りしてもらったほうが易しいでしょう。肩取りであっても、相手の中心に向かって膝を差し込めば同じことではありますが、前かがみになってしまったりして より難しそうです。
Fig.5 A: 胸取させたときのa1=力点, B1=支点, L1=両者の距離。B: 肩取したときの。
型がわざわざアレンジされているとき、「学習者が、その人にとって今重点的に学ぶべきことに集中し、かつ不利な癖をつけないように…」という先生方の配慮が感じられます。私の受け取り方に過ぎないので勘違いもあるでしょうが、そうであると仮定すると技に入り込みやすくて便利だと私は思います。