2019/4/20 (土) 18:30-20:00 住吉道場 吉田先生
1. 単位稽古の基本的な構成を考えてみよう
今日は合気道の指導要領についてです。教える立場になる予定がない人も、"将来自分が道場を持つなら" という仮定のもとに稽古に参加してみてはいかがでしょうか。そうするとプロの先生方の指導方法論や進捗マップに注目するようになり、別の面白さがあります。本当に教えることになったとき生徒に利益を与えるでしょう。
この道場の特徴の1つは、1コマあたりの稽古(=単位稽古 Fig.1)の流れが起承転結を持つ一話完結物であることです。ストーリーとして物事を学ぶのは、ヒトの生理に適っておりストレスなく習得しやすいものです。
では実際にどのような内容でプログラムされているのか、特に典型的な構成を持つ今日の稽古運びを例にして考えます。
Fig.1 人類史における稽古、1人生の、年間の、1日の、1回の(=単位稽古)、1動作の。
シナリオは特に突飛ではなく、堅実でベーシックなフレームに則っています(Fig.2)。まず1稽古単位でのテーマを明確にし、テーマ数は1項または1.5項までです。
例えば今日のテーマ=基本動作は、『意識の使い方のひとつ、「上・下」の意識』です。
Fig.2 代表的な一コマ当たりの稽古フレーム。Marco de práctica diaria típica:1 movimiento basico de hoy. 2 Explicación. 3 Añadir cambios de postura. 4 Aplicar a formas tradicionales. 5 Movimiento Físico <Uso Consciente. 6 añadir cambio de postura de nuevo. 7 Movimiento Físico << Uso de la Conciencia. 8 método de respiración
1. 基本動作の確認:逆半身片手持呼吸法
はじめに体の動きによって「今日の基本動作」の意識を体現します。今日の場合だと手などを上にあげたり下げたりです。持たせた手を上下にすることで結びます(Fig.3)。この段階では枝葉を排します。例えば今日は、足捌きや最後に相手を投げることにこだわらないようにしました。
Fig.3 大きな動きでやります。
2. 基本動作+体捌き=型に組込む
2-1.+「縦の円」:逆半身片手持押さえ込み
次に、他の身体操作を加えて技の型に基本動作「上・下」を組み込みます。上下をして繋がると結び目が上がりますから それに合わせて縦の円で返します(Fig.4)。すると押さえ込みになります。
Fig.4 以前の稽古内容とリンクさせる
2-2. +「体位の変換」+「縦の円」:逆半身突入身投
体位の転換と合わせた型もやります。回転すると他の要素も入って複雑になってしまい目的がぼける恐れがあるので、足はその場で180°向きを変えるだけにします(Fig.5 A)。それと縦の円を組み合わせると入り身投げの型になります(B)。
Fig.5 この段階ではまだ楷書のような動きで
3. 身体動作を抑制して意識で行う
これまでは体の動きで上下の意識を表していました。次は体の動きを抑え、より自然にしながら、意識は同じように維持してみます。
3-1. 基本動作(意識で)
意識の上げ下げはきっちり行い、手はわざわざ上下させようとしなくて良いです。それても「上・下」結びが可能なことを確認します(Fig.6)。
Fig.6 むきにならずに楽しみましょう
4. 体捌きと合成する
4-1.「基本(意識)」+「体位の転換」+「縦の円」:相半身突入身投
相手の突きを前の手で受けつつ上下の意識で突く腕と結びます(Fig.7 A)。転換とともに相手と方向を揃えます(B)。この時下がっており、次に上がるので縦の円に乗せてひっくり返します(C)。これは入身投げになりました。
Fig.7 以前にやった「切ってくっつく」と形は似ている
4-2.応用編「基本(意識)」+「体位の転換(意識)+「縦の円」:相半身突呼吸投
上記の入身投げの体位の転換も意識の中でやってしまいます。返し方は縦の円です(Fig.8 B)。喉から顎を狙うような当身でないのは、受は上下のあとに浮き気味になり すでに顎が上がっているからです。
これは動きだけ見ると「間合いで先をとって入る」という難しい技です。いきなりこれをやれと言われてできる人はほとんどいません。しかしまじめに段階を積み重ねていけばら最終的にはこれも可能ですよということです。
Fig.8 ただ手を出しただけに見える
5. 両手持合気下げ座り呼吸法
座ると下半身の動きが制限されますから坐法で練習すると、ちゃんと意識が使えてるか、力でごまかしていないか 確認することができます。
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以上が代表的な稽古の進め方です。段階的に無理なく上げていき「知らない間にできている」を目指します。
合気道をする人は、たまに人に教える機会に恵まれた時や、部活などで先生役に当たってしまったとき、うまく稽古内容が伝えられずグダグダになってしまった経験はないでしょうか。わたしはあります。悔しいものですね。そんな時に参考にしてください。
一般的に、プロットは完全なる論理的整合性を堅持しなければならない。そしてそれを気づかせてはいけない。そのように完成した端正な稽古構成は良質な劇のように人に感動を与えます。人は感動すると 頑張らなくても自然と内容を記憶しますから、生徒に最短コースの上達をもたらすでしょう。