冥王星島10
中学校でさちは毎日下駄箱の上に乗っていた。 下駄箱と天井の間のスペースは身を屈めてやっといられるくらいで、ちょうどよい。8時40分に本鈴が鳴って担任の山賀先生が玄関を通って行く時、足をとめないまま下駄箱の上のサチを目で確認する。さちはコクリと会釈する。
昔大学の先生をしていたり今はカウンセラーをしていたりするお婆さんが心学の先生として 1学期に1回くらい来た。来すぎだった。
心学の婆さんは、学校のそとでも近所の年寄りが「膝が痛くてもう年だ。年を取るのは嫌なことだ」とぼやくと、「年を取るというからいけない。年を頂く、とおっしゃれば… 」などと言う。年寄りはほほぉと笑う。さちはそういうのが嫌いだった。