大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

稽古記録185(2019/9/15)

2019/9/15 (日) 尼崎 

                   <まとめ >

 1.  推手で崩しの練習

 

「競技推手」をご存じですか。私は知りませんでした。今週、合気道仲間が主催する推手稽古会に参加させていただき、すごく勉強になりました。太極拳の基本練習や合気道の基本動作でも推手ぽいのを見かけますが、これだけを競う世界大会があるそうです。触れ合った相手を崩して片足でも動いた方が負け。その場で相手を崩せるかどうかという、玄人好みの武術。

 ■ 競技推手とは

詳しくは全日本競技推手連盟をご覧ください。不意を突いて押しているだけに見えて、実は駆け引きと、色々な「繋がり&崩し」のテクニックを駆使しているのが分かります。すごく難しそうですね。瞬間相撲。


板野眞雄2018台湾全国大会優勝記録動画

 

これは一教運動っぽいです。体つきがとても充実した選手たちです。


Tai Chi 2016 世界盃太極拳推手 壯年組 第四量級 冠亞軍賽-2 武勁太極

 

競技推手の練習では:①安定した強い姿勢で立つこと ②相手と繋がって感じること ③相手の重心移動を感じてカウンターとして相手を崩すこと、など合気道で必要な技をゲームのように楽しく学べます。

 

 

■ 練習内容

1.姿勢

1-1. 下半身

仙骨を立てて後ろ膝を緩めて立つのは合気道ではあまり使いませんが、重心が後ろに寄ってしまったときや両ひざを柔らかくして低くなりたいときに便利だと思いました。一般的な合気道の立ち方と使い分けられそうです。

f:id:fanon36:20190916014853p:plain

 Fig.1 A静的 B動的

 

1-2. 体幹

腰で曲がってしまわないには、「下肢がみぞおちから生えているように」。そうすると後ろに押されても胸のところで力を逃がせられます。

 

1-3. 膝(大円)

f:id:fanon36:20190916014721p:plain

 Fig.2 自分が膝使いをおろそかにしてきたことが分かる…

 

それでも押し込まれてしまったら。股関節と膝を使って円で返します。こういう時は足で退いて対応していたので、やってみると案外「あれ?できない?」慣れるまで時間がかかりました。普段の合気道ではここまで膝を駆使することは無かったんだなと気付きました。

 

2.崩す

2-1. 接触:一定圧を感じる接触

相手に気づかれずに力を伝えるには、接触部分の圧を一定にしなければなりません。持ち方や腕に遊びがあると、動く時に衝撃が伝わってしまいます。まずは丁寧に理想的な圧で繋がります。うまく繋がれば、腕は固定したまま相手を運ぶように、体でほんの少し振るだけで相手は重心をずらされます。お互いに感覚を練習するために対抗せずに行います。

 

2-2. 膨らみで:胸フワ

「胸をフワっと開く」ことで相手を浮かせます。これは低い姿勢から伸び上がるように見えますが、そうすると自分も浮き気味になってしまいます。相手を足場から押し出せたとしても、自分も弾みで足場から出てしまったり相手にカウンターで引っ張られたりして危険です。そこで胸を膨らませて相手を吹っ飛ばせば、足は地面に押し付けられますから、自分はより安定します。

f:id:fanon36:20190916014608p:plain

Fig.3 自分(丸い方)は浮いていません

 

2-3. 落下で

f:id:fanon36:20190916014414p:plain

Fig.4 頸がむち打ちっぽくなるくらい威力あり

膝を抜いて体を自由落下させます。相手は急に重いものを持たされたみたいにガクンとなります。この時は腕が体幹と一体化していることが重要です。これ、やっているつもりでも難しいですね。机に肘をついている状態を作る「站椿功(タントウコウ)」という姿勢練習をしました。これを集中してやると上体が1つになって、落下の力をまるまる相手に伝えやすいです。

 

2-4. 一方だけ落下:切り分け

 両手で繋がり、片方を空間に固定したまま、もう片腕は体と一緒に落下します。ハサミで切り分けるようなねじれの力が相手に加わります。

f:id:fanon36:20190916014508p:plain

Fig.5 ずらすのはほんの少しでいいです。

 

2-5. 体幹で:アコーディオン

 今度は体幹を曲げることで左右差のある力を相手に与えます。自分の重心が移動するような曲げ方では弱い姿勢になってしまいます。そこで、腕と胴体を一体化した状態で片方の体幹側部をギュギュギュと折りたたんでいくことで、重心を保ったままハサミのような力で相手を崩します。

f:id:fanon36:20190916014804p:plain

Fig.6 C:アコーディオンのように。

ここ2回ほど私は脇を締めることに拘って練習していました(稽古記録183, 184)が、脇を締める一方で良いのかな?と少し疑問に思っていました。ちょうど今回「脇を伸ばす」動きも教えてもらいました。ふつうに脇を伸ばす体操の恰好をして限界まで伸ばします(Fig.6 A)。そこで胸いっぱいに息をすうと、限界だと思っていた体の側面が更に伸びるのです。脇そのものを筋肉で伸縮すると固くなってしまうが、「脇の開け閉めは呼吸でコントロールするのか!」と分かって嬉しかったです。

 

 

 3. 威力のある押し方

 相手を崩したらすかさず押し出します。この押し方は合気道でよくやる「足→腰→肘→手」という、波が伝わるような作用時間が長い押し方だと相手が耐えにくいです。(力積については稽古記録22を参照)

f:id:fanon36:20190916014952p:plain

Fig.7 力積↑

この押し方は、押された人がはじめに感じる力の大きさに比べて、最終的に受け取るエネルギー量が大きいため、堪えにくいのです。この動きを最小限にしてほとんど接触だけのようにできると、まるで触っただけで人を吹っ飛ばすようになるそうです。そうできるとかっこいいですね。私はまだよくできません。そういえば空手でも足から伝わるような突き方が、まだできなかったっけ。地道に練習です。

 

 

おまけ

「競技推手の、足を少し動かしていい」版みたいな動画がありました。富木流合気道の試合です。ちょうど推手を合気道に一歩寄せたみたいで面白い。

 


富木合気道 乱取り名場面集