9/6/14 (月) 19:00-20:30 武道場
1. 直角方向への運動は前向きに行う。
2. 受けることと攻撃は同じもの (精神的な意味合いではなく物理的に)
両手を広げ、前に放射。鞘を抜くように90度にもすすむ。相手と一緒に。という日です。
Fig.1箸箱 La caja de palillos
1.ベクトルの調整のため圧を真面目に感じる:横面打前受身
横面打ちの中心に両手 (胸) を開きながら入ります (Fig.2 A)。相手に向かうのは抵抗があるかもしれませんが、そうすることで横面打方向に力が出ます(B)。繋がったら足をつかってちゃんと押さえる腕に載ります(D) (網代の入り方は稽古記録97-3参照)。。傾いた受が立ち直って切ってくる圧を手刀に乗せることで転換して前受身に
Fig,2 大切なのは横面の手を取りにいかないこと。C:手だけではできない。
2. ベクトルの分解:横面打入身投
同じように捌いても受が早く立ち直って向かってきた場合は裏技に入り、下に回してから回転投げや、後でやる四方投げでも良いでしょう。しかしもっと「一見やりにくそうな真逆の方向転換」も、力が開いていれば同様に出来るという体験のために入り身投げをしました。
取(Fig.3人物A)は両手を角度αで開いた方向に放出しており(ベクトルf1,f2)、前方への合成ベクトルはF1です。受(人物B)が取の中心に向かって横面を打つ力はベクトルF2です。F1+F2=F3が、二人が流して転換していく動きの進行方向成分です(F3に合わせるから受がついてくる) (Fig3 d,e)。取の力が同じでも両手が角度βに開くと、受に対する分解ベクトルf2'は、角度αのときのf2より大きくなるため受の対立成分f3'と合成すると今までと真逆の方向に合成されます(F4)。なので急な入身投げに対して受はぶつからずに倒されます(Fig.3 f)。
Fig.3 角度を変えることで合成ベクトルが反対方向に変わる。角度を変えるためのはずみとして一旦進行方向へ強く振れるのが、腰の刀に手をやる抜刀動作と似ている。
3. 鞘抜きで分解ベクトルを調整する
上記の入身投げの動作は腰の刀を抜く動作です。合成ベクトルのエネルギーを保存したまま角度を変えて直角方向の分解ベクトルを調整する装置として、刀の鞘は使用されています(Fig.4)。
Fig.4 鞘から抜くことで角度β(>α)に滑らかに移行し、エネルギーが失われないまま直角方向のベクトル増大(f2>f1)に変換されていく。
4. 横向きの力は前方移動で生じる
このように鞘は調整装置(ギア)として使えますが原動力にはなりません。運動方向(前方。Fig.5 y)と直角の方向への力(Fig5 x)を増加させるには、そちらを直接押すのではなく(図b)、押したい方向と垂直方向である前方yへ向かう力F(図cおよびe)です。横面打を受ける時に、打ってくる手ではなく真正面に動く力です。また、呼吸投げで相手の首をおすのではなく前方(胸を開く)の運動です。
Fig.5 先生は分かりやすくFを「(手刀の揃えた四指に対して) 親指の方向」と表現されます。ベクトルを描かなくても結論に直結するので誰にでも分かりやすいでしょう。
3. 袖持面打四方投
袖持ちすると受が取りの中心を正確に攻めやすいです。上記と同じように返すと四方投げになります。袖持されているので、取は間合いを適切に取らなければ首が締まるので、どうも間合いが近くなりすぎる癖がある私には良い練習です。
4. 後両肩取三教
90°どころか、さらに真後ろからの攻撃に対しても前方へ放つ力を使います(Fig.6 B)。上記と同じ理屈ですから、受が後ろにいるからといって後ろに力を出しては逆効果です(A)。受を崩して前に持ってきたあとは、今回は自分の肩に手をおくように、受の手を下からすくって三教にしたり(C)、腕ごと抜けてしまって呼吸投げのようにしたりしました。受を吊上げてくぐるには上体をまっすぐに保つことです。取が前かがみになると受が安定するので、自分がうつむいている状態で敵が真ん前で一番強い姿勢になっているという事態になってしまいます。
Fig.6 取が出している力の方向は、後ろ取りの時でさえ前方。
5. 受けることと攻撃することが同じ
以前から先生方が、受けた同じ手で攻撃するのを見ると不思議で全然分からなかったです。今日はそれを説明されて、やっと理屈が分かりました。できるかどうかは別ですが。
私たちの先生は不要な成分を極端に削いだ形を大きな動きで見せてくれるので、理解しやすいです。動きの中にベクトルの矢印が浮かび上がって見えるようです。実戦では先を読まれるリスクからわざとそうしない方々もいるかもしれませんが、技の構造と力学的モデルとして大変勉強になるので、よく分からないひとがいたら参加されるとよいでしょう。