大阪合気道自主稽古会

合気道経験者のための不定期な稽古会です。忙しくて道場に通えないが時々稽古したくなる人向け。流派は問いません。

稽古記録31 (2018/5/28)

 2018/5/28 (月)18:30-20:00 地下道場  <参加者> 2名  <負傷者>なし

 今回は大きな節目になるでしょう (私にとっては)! 

私には真似したかった二教があります。合気会H先生のです。よくある「効く二教」は、手首や肘を痛めつけて、痛いから動けなかったり逃れようとして崩れたりするやつです。しかしH先生のは全然痛くはないのです。それなのに形が決まった瞬間に受は膝が折れ、へたり込んでしまうのです。どうしたらこれができるのか、ずっと悩んでいました。H先生は「中心を取ればいいんじゃよ」とだけ仰るが、中心って何だろう…??  ― じゃじゃん!ついに少し分かったかもしれません。

 本日の内容;[1] 受の中心をとるとは何か [2]その二教への応用    [3] 肩回しによる「アイドリング」。

 【1】  受の中心をとるとは

【1-1】 受が動きにくくなる体勢「床に糊付け」?

うまく受の中心を取ると、受は両踵に等しく体重がかかり、足を移動させにくくなります (Fig.1 左) 。片手両手持ちですると分かりやすいです。このように足が床に貼りつくと、バランスを立て直しにくくなり、技にかかりやすいです。この状態にしてしまえば、あとはどうとでも倒せばよいです。

下に落としてもよいし、寄って呼吸投げでもよいです(Fig.1 右) 。呼吸投げのように取が移動するときは、相手を中心で床に貼り付ける力が緩まないように、力関係を維持したまま動きます (Fig.2) 。

わざわざ受の正面から斜め前に寄るのは単にその方が取が腕を上げやすいからです。片手で荷物を持つとき、胸の前に抱えるより、蕎麦屋の出前のように体の横で手に載せる方が楽です。背筋を使えるから。後半の呼吸法はそれだけのことで、大事なのは前半の受がバランスを取りにくい状態を作ることです。ではこの状態はどうなっているのでしょうか。

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 Fig.1 受は足が持ち上げにくいのを感じバランスを立て直せない

 

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 Fig.2 結んだ部分は空間において固定。受けに与える圧も維持。

 

【1-2】 中心とは、そこを取られると動けなくなる場所

受に起こっている現象を外から見ると、足の裏がぺったり 扁平足のように貼り付いて、動けなくなってるように見えます。しかし、足の裏が床に固定されただけでは、膝や腰を使うと案外バランスはどうとでもなります。スノーボードの要領です (Fig.3) 。また、両足底に重量をかけることで足のアーチを崩すと背面筋群が伸展気味になりバランスを崩すという意見もありますが、足のアーチはそう簡単に崩れるものではありません。

  f:id:fanon36:20180529172247p:plain Fig.3 足裏糊付けだけなら どうということはない。

 

同じように足の裏を床に糊付けした2人を見てみましょう。 1人は足裏以外は自由で、この状態だと両膝をくっつけたりおしりを振ったりできます (Fig.4 A)。もう1人は重い物を、"腰で持って" います。重さが骨盤の後面にかかり、腰回りが固定されています。股関節しか使えないため、膝の動きはとても制限されます (B) 。

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      Fig.4 腰で物を持ちあげるとき、股関節の可動域が狭まる

 

 骨盤の3つの関節(腰腸関節と左右仙腸関節)は後側にあり、ここで重みを受けるとこれらの関節が固定されてしまいます (Fig.5 左図) 。おそらくこれがポイントです。骨盤後面を固定させると、下方への力をうけたとき力を逃がそうとして動ける関節は膝と股関節しかありません。結果、骨盤が前方へ回転し膝が前に出る。いわゆる腰砕けの状態です(右図)。もちろん足はぺったり貼り付いていますが これは腰砕けの結果起きる状態の1つに過ぎません。

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           Fig.5 意思とは関係なく膝が出る

【1-3】結論

ここで言う「中心を取る」とは、相手の骨盤後面をめがけて体重を乗せることによって その関節群を固定することです。

 

【2】その2教への応用 

こうやって崩されるときの感触が、H先生の二教で膝が折れるときのと似ています。しかし片手両手持ちと違って2教のつながり方では、受のどこに重心が移動しているか分かりにくいのです。解決のポイントは腕を(1)きっちり固定する=受の中心にダイレクトに重みを伝える (2)痛くしない=受が硬直しないので、受の重心移動がよく読める です。

【2-1】痛くないキッチリ固定

 受の左手を決める二教がモデルです。①受左手首を真っすぐ(自然に曲がる方向に)屈曲させる (Fig.6 ①)。②肘を回内させる。二教では小指側に捩じっているように見えますが、それは前腕が回内しているからです (Fig.6②)。手首は捻る必要はありません。というか捻ってはいけません。痛いし腱を傷めてしまいます。

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   Fig6. 手首は真っすぐ屈曲。決して捻らない。(②☆) 

 これで前腕 (腕橈骨筋) が伸びきりました (Fig.7) 。

  f:id:fanon36:20180529172430p:plain Fig.7 末端から丁寧に固めていく

 

 ③肩を内旋し(Fig.8 左図A)、④肘を90°より少し深く曲げる (B)。上腕二頭筋と三頭筋が伸びきります。肩関節は痛くないが、筋肉が引っ張られるので肩の上下運動がしにくくなります (右図) 。

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  Fig.8 上肢が固まった

 

これだけではまだ、肩甲骨をスライドさせて逃げられます。そこで ⑤上腕を後方へ押し込んで肩甲骨をロックします (Fig.9左図) 。これで全て固まりました。上肢は体幹をコントロールする硬い固定ハンドルです (右図) 。

 

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    Fig.9 これで「中心取り」の準備ができました。

 

 あとは片手両手持ちのときと同じようにすれば崩れるのですが、片手両手持ちよりハンドルの位置が高いため、真下に落とそうとしても受の後ろ側により重みがかかりがちです。そうして前足が浮くと、受は立ち直ってしまいます。なので二教では ⑥自分の臍の方へ巻き込むようにして、受の膝を前方斜め下へむかう力を与えます (Fig10)。

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 Fig.10 途中で受の前足に自由を与えない 

これで痛くなく、膝から落ちる二教ができました!失敗するときは以下をチェックしてみてください:

 ・立ち位置は受の真正面で、やや近い距離へ。

 ・受の体重が両踵に乗るように、取は前に傾くことで体重をかける。

 ・最後の巻き上げは受の前足がぐーっと床に押し付けられるのを感じる方向へ。

 

 

【3】肩回しによる「アイドリング」

上記の片手両手持ちで中心取りから単純に落とすとき、折れない手で普通に落としても良いのですが、肩回しを加えるとリズミカルになります。リズミカルさは楽しさのために重要です。

 

【3-1】前後の肩回し

手を上げたり下げたりする前に、肩を回して助走をつけると、自分の硬さが取れて受と結びやすいです。受を上へ浮かせるときは肩は後ろ回しで、落とすときは前回しです (Fig.11上図) 。

後ろ回しは「一教運動」で練習できます。その時、肩の回転運動はちゃんと一番低い位置まで落とさなければ、ちゃんと加速がつかないので意識してください (Fig.11左下図) 。前回しは舟漕ぎで練習できます。舟漕ぎでの注意点では櫂を引くときに拳まで一緒に引いてしまわずに、拳を空間にできるだけ残すことです (Fig.12)。スムースに肩を回すには、上肢をブランブランに緩める必要があります。

f:id:fanon36:20180529172756p:plain Fig.11 練習しないと肩は素早く動かない

 

f:id:fanon36:20180529172826p:plain Fig.12 基本体操

 

【3-2】肩でなく体を回す

中心取りで大切なのは結んだ場所を空間的に固定することです。なので肩回しでも体の方を動かすと手は静止できます。例えば肩を後ろへ引く代わりに上体を前に出すのです (Fig.13) 。

f:id:fanon36:20180529172928p:plain Fig.13 腕をテーブルに載せているパントマイムのように空間に固定。

 

 【3-3】実際に持たれる。

肩回しは助走です。接触する時にトップスピードになるような助走がタイミング的に理想です。取の手にパシンと入ります。いわゆる「受の手の中に自分の手を放り込むように」つながるのです。助走にあたる肩回しは、受の出方を観察しながらなのでゆっくりでいいです。

 

【3-4】肩回しを腹から下だけでやる

実際に肩を回していると変ですしバレバレです。それに手をブラブラにしないといけません。そこで肩を回すかわりに、お腹(腹筋)と腰と膝で同等の運動をやってみます (Fig.14) 。するとずっとクルクル回してアイドリングをし続けられるので、受がいつ来てもタイミングがあいます。さらに折れない手でいることもできます。いつもじっとしていられない落ち着きのない人にピッタリの裏技です。

f:id:fanon36:20180529172914p:plain Fig.14 腹と腰を肩回しし続ける

 

 

 

 <Debreafing>

 今回気づいた仮説は、せいぜい8mm程度の可動域しかない骨盤後面の関節が案外下半身の運動を支配しているということです。型稽古においては、重みをかけることで骨盤後面を固定すると考えましたが、本当にそうなら、受の腰を医療用の骨盤サポーターで固定すれば、中心をとらなくても簡単に倒せるはずです。試してみたいですね。専門家に尋ねてみる予定です。

 

 医療用骨盤固定具


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 もしこれができたら、10年来のH先生二教の謎が解けるのです。合気道の稽古はとてもエキサイティングですね。すでに知られている知識を覚えるだけとか、公開された最新ガイドラインや最新論文を効率よく取り込むか、本職においてはそういう公式地図の上を私たちはうごめきがちですが、合気道ではいつも自分しか知らない風景に出会えます。自分の妄想が最先端です。人に理解されることを求めなければ、妄想と現実は同じ価値。 あ、関西大手道場の飲み会でよく話されるテーマ「究極に主観的に。」と似てますね。

 

@BnD(http://bnd-teppan.com/) クラフトビール店。私はジュースですがおいしかったです。

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