2年後の味噌を仕込みに 山へ入る。寒い方がゆっくり熟成して良い味噌になります。乗鞍岳と御嶽山に挟まれた峰は青い樹氷に閉ざされて氷点下です。
「合気道は動く禅」だと よく言われます。師範がそう言うのを聞いたことがあるし、遠藤征四郎先生の本にも出てきました。私はそう感じたことはまだないし、じっとしていると眠るので禅も瞑想もできません。しかしそう諦めることもないです。
なぜなら味噌仕込みは 結構禅だからです。1日目はひたすら大豆を煮ます。灰汁を丁寧にとるのが味の淡麗さにつながるのでつきっきりで鍋の面倒をみます。ストーブを焚いても足元が冷える小部屋で、鍋の前に立ち灰汁を掬い続けます。豆が軟らかくなるまで5時間くらいかかります。退屈な作業だと思うでしょう?それが、実はあっという間に感じます。凍った湖の表面にしんしんと雪が降り、曇天なのになぜか薄明るい谷を臨む斜面の役所で、大豆を眺めては灰汁を掬い眺めては掬いしていると、世界に自分と大豆しかいないように思われてきます。
大豆との静かな時間は一瞬で ほとんど記憶にも残りません。
なにをやっても合気道の役に立つ。2年後 味噌樽を開ける時にはどんな技になっているかな。