大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

稽古記録22 (2018/1/19)

<稽古記録>

2018/1/19(金)18:30-20:00 地下道場  <参加者> 2名  <負傷者>なし

f:id:fanon36:20180121143850j:image当道場のベストパートナー

 

【1】合気と合気道

合気道と合気とを明確に区別しましょう。混同して説明すると初心者を混乱させてしまいます。今私たちがやっているのは合気道のほうです (Table1)。

  Table1 「合気」と「合気道」は意外と別物

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1-2 合気道での力

自分の力を最大限に利用するために自分の力を分解してみます。

   力 = 重さ(体全体) x 速度

です。コロコロがついた椅子をドンと押してみましょう。手だけで押すより体全体で押す方が、椅子は遠くまでコロコロと動きます(Fig.1 左)。

  f:id:fanon36:20180121145219p:plain Fig.1 体でゆっくりと押していく

 実際に相手に伝わる影響力は

  力積 = 力 x 時間

です。接触時間が長いほど力積は増大します。このために柔らかくじんわりと接触するのです。柔らかい触り方は優しいからではなかったのです。椅子を押すとき一瞬で押すのと、じっくり押すのとでは椅子が動く距離がどれくらい違うか実感してみましょう (Fig.1 右)。

 

【2】椅子を使って練習

2-1. 接触時間と加速感を体得

椅子を直線的に引いて転がし、ぶつからないように転換してよける (Fig.2) 。柔らかく接触して、接触時間をかけて力を伝える「じんわり加速」の重さと加速感を体感してください。方向を変えて連続的に椅子を動かしてください。理想は椅子をいくつも置いて行う多人数掛けの捌き稽古ですが、1つ1つゆっくりと丁寧にやります。

f:id:fanon36:20180121145752p:plain Fig.2 椅子相手だと気兼ねなくできる

 

 2-2. 重力と同じ。回す時は回さない

自分を中心にして椅子をぶん回します。加速してくると椅子の足が浮くくらいです。さぁ、この時腕にはどんな方向の力がかかっていますか?腕が抜けそうなくらい遠心力が掛かっています。椅子を自分の中心に引っ張っているのです (Fig.3) 。

f:id:fanon36:20180121145952p:plain Fig.3 これこそ気兼ねなくできる

椅子が円運動をしているからといって円周方向への力はかけていないことが分かります。これは月が地球の重力で地球に落ち続けた結果、地球を中心とした円運動になるのと似ています(Fig.4) 。

f:id:fanon36:20180121150117p:plain Fig.4 初速+引力=円運動

技をかけるときも初速を与えたら、あとは中心に引っ張るのみ。受けに円の動きをさせるので円周方向に力を加えてしまいがちですが、そうすると逆に減速してしまいます(Fig.5 左端) 。初速&求心です(真中)。子供を振り回して遊ぶのと同じです (右)。

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 Fig.5 十分な初速を与えられることが条件になります

 

 2-3  技に応用

両手持ちで、舟漕ぎ運動の要領で落とし、初速を与えるだけの僅かな腰回しで方向をつけたら、あとは自分の中心に引っ張り続ける。この引っ張りが強すぎたり、速度が遅すぎると寄ってきてしまいます。このために、力と加速の釣り合いを椅子で練習したのでした。

 

【3】引落し

多人数では連続して捌くことになります。その捌きの基本動作 その2です。(その1は 稽古記録19の2-2参照)

3-1. 片手で袖引落し

袖を摘んで弱い方向と角度で直線的に落とす (Fig.6)。今日のポイントを使います。急にグッとやると受は耐えられます。柔らかくじんわりと接触時間を確保してください。

f:id:fanon36:20180121151215p:plainFig.6 一番シンプルなやり方で練習

♦︎ 引き寄せてしまわないために

力を出すべきなのに力を込めて引いてしまうという失敗はよくあります。注意点を4点挙げます。

  ①  速い動作であってもヒョイとせずに引き絞るような気持ちで接触する

  ② 小指側で導く:そうすると肘は内に入り、屈筋より伸筋が働き、折れない手の形になる (Fig.7) 。

f:id:fanon36:20180121151447p:plain Fig.7 結局折れない手が実現されます

 ③ 最後までまっすぐに:

最後がハネ上がって角度が甘くなると受は立ち直ってしまいます。緩まないように、最後は1秒間止めるくらい。床に突き刺してそのまま押さえつける感じです (Fig.8 左)。

 ④  回らない。足は引くだけ。

体全体を使うために、腕と対照側の足を腕が動く分だけ引く。ダンスのように回転すると最後が直線でなくカーブになるため、やはり受は立ち直れてしまいます(Fig.8 右) 。最後まで直線的に落とすことで、受は床にぶつかる恐怖心というかコントロール不能感を感じます。

f:id:fanon36:20180121151618p:plain Fig.8 ここでも円でなく直線

 

 ※ 合気道の技では一般的に受は円の軌跡を描くことが多いですか、それを見て取の動きを円にしてはいけません。取はあくまでも最短距離である直線運動が基本です。受は遠心力の結果、振り子のように丸い動きになるだけです。

 

 3-2. 両手諸手取

これも掴まれる前に受の袖か両腕を引っ掛けます。掴むとできません。スルスルと滑って引っかかった箇所(肘の出っ張りなど)を落とします。

 

3-3. 両肩落し 

稽古記録15【4】でやったおんぶおばけの技です。落とす時に袖引落しの感覚を使うと、より効果的に落とすことができます。

正面突を、片足を引く闘牛士の躱し方で躱して受の背後に回り込みます。両肩に手を引っ掛けたあと、今回学んだ落とし方をします。ぐーっと柔らかく長く直線で (Fig.9) 。力積が大きいために ゆっくりの割に受は勢いよく落ちますから、巻き込まれないようによけましょう。

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Fig.9 応用の1つ

 

 ♦︎ 歩法

両肩落しは移動距離が長いです。受の周りをほぼ一周することになります。しかも素早くです。

モタモタしたり、歩幅を広く取りにくいなぁと感じたりしたときは、腰が高いかもしれません。稽古記録16【1】 でやったように腰を低く落としてみると、大きな歩幅がサッと出ます (Fig.10) 。足腰が弱いとそのうち腰が高く戻ってしまいますから鍛えましょう。

f:id:fanon36:20180121152211p:plain Fig.10 実際やって差を実感しましょう

 

【4】入身投

で落とすときにも、このじわりとした落とし方を使ってみてください。この場合は後頭部と頚椎のつなぎ目あたりを押さえつけます。そして顎の下に指を引っ掛けて固定しておきます (下顎角と胸鎖乳突筋の間、頸動脈が触れる位置) (Fig.11 左) 。

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 Fig.11 この落とされ方は大変不安定な屈み方になるので、すこし弛めるだけで受は起き上がってくる。

頸動脈を指できめ、背中を肘で固定する形になります。引き起こすとき受の頭が体の上にくるようだと ただ立ち直らせただけです。落とした頭の位置で引き上げると体が不安定に反る姿勢を作れます (Fig.11 右) 。

 

 

   <Debreafing>

年初の稽古です。袴を穿くときっちりした気分になります。

椅子はいいです。純粋な力の感覚を遠慮なく稽古できます。椅子がいくつかあると1人きりでも多人数掛ごっこができますね。レンタルスペースの備品なので、熱くなりすぎて壊さないように注意です。ああ楽しかった。

 

 @ Trattoria Gus亭 (https://ameblo.jp/gustei/entry-12078971926.html)

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 外れなしの自称 "大衆食堂" 。 食器が大好きなのでしょう。白カビチーズは虹色に反射する粒を散らした皿。桜海老パスタは厚く渋い皿。肉は清潔感溢れる水紋の真っ白な皿です。