大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

冥王星島14

先輩の帰郷 (上)
冬に最大のお祭りがある。夏祭りでも秋祭りでもない。それは年の押し迫った頃だ。奇祭というほどではないが、その日は仕事も学校も休みになる一番の関心ごとだ。しかしここ、丹前町では事情が違う。

 柿ノ本先輩は高校を卒業すると千鳥足でふわふわ都会へ出ていった。あんな人も珍しい。いまや全国で7箇所も店をかかえている。蟹の炊き込みご飯が目玉の料理屋だ。働きはじめは工業機械のリサイクル屋で雇われ、次は新聞記者の助手をしたり、いつも適当な先輩だった。どうやって蟹に行き着いたか分からない。多分本人も分からないだろう。
祭が近づくと帰ってきて、故郷の役場に沢山お土産を持ってくる。集会所としても使われる役場はたいていなにかの集まりがあり住人だれもが使うので、お土産は喜ばれる。

ある年の暮れ。柿ノ本先輩が沢山のお土産とともに着岸したと、港から姪っ子が自転車を飛ばして知らせに来た。まだ役場は一番忙しい時刻だったので、みな自分の仕事から目を離さず手を動かしたまま「柿ノ本さんが帰ってきた。」と私語をする。隣から隣へ伝達され すぐ皆の知るところとなる。北陸の蟹、鯖、焦がし餅、冬苺、そして酒にお話が来たということだ。

(続く)

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