大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

物理学酒場4': 磁場①補習

2017.11.30 物理学酒場4:磁場① の【最後の実験】で不完全燃焼だった部分を補習しました。

下の図は前回に載せたものですが、球磁石をアルミ筒内に落とすとユラユラゆっくり落ちる実験です。図の右で力の方向 (オレンジ矢印) が結局内向きとなり、なぜ球磁石の落下をやわらげるのかわかりませんでした。

f:id:fanon36:20171201121428p:plain(前回のFig.8 再掲)

 

【フレミング左手は難しい】

レミング左手の法則はさすがに覚えていましたが、学校で習った時は「中指は電流、人差し指は磁力線の矢印方向、親指は力」と丸覚えでした。今回途中で混乱したのは、電流がなんなのか、力とは何をどうする力なのか、力の発生が最終的に磁石球に与える影響、を判っていないままであることが原因でした。フレミング左手を理解していなかったのです。そこに戻ってやり直します。

 

【フレミング左手を砕いてやり直し (Fig.1) 】

f:id:fanon36:20171202190352p:plain Fig.1 フレミング左手の説明

A:緑矢印の磁場の中で、➕電荷にオレンジ方向の力を加えると、(オレンジ方向に動けばいいいいのに!) ➕は青方向へ行こうとする性質がある。

B:➕の移動 = 電流。導線を右向きに電流が流れます。

C:磁場の中で電流が青方向に流れるとき、➕にはオレンジ矢印の力が働きます。力って何のことか漠然としていましたが、「➕を移動させようとする力」です。状況によって、力が働く対象が棒だったり球だったりコイルだったり壁だったりして 妙に恣意的で混乱していました。それぞれの物体の中にある➕に対して力が働くのです。その結果、➕を含む棒が転がったりする。

このケースでは導線の中の➕が引っ張られるので導線はオレンジ方向へ転がる。これがフレミング左手を使うときの、電流と力です。

 

 【最後の実験で起きた事】

大まかに2段階のことが起きました。アルミの円筒をアルミリングの重なりと考え、1つのリングだけに着目してみます。

(1) 静止する筒内を磁石球が落ちるとフレミング左手により、リングを反時計回りに流れる電流が発生した (Fig.2 青矢印) 。

f:id:fanon36:20171202190436p:plain Fig.2 磁場 (緑), 電流 (青), 力 (オレンジ)

 (2) その電流が磁場と一緒に作る力はフレミング左手により内向き・斜め下の方向に生じた。すると何故か磁石球がユラユラした。

f:id:fanon36:20171202190503p:plain  Fig.3 最終的な力の向き

 

【最後の実験の各段階の説明】

 <1>  「力」とはどれを指すか

アルミ筒はアルミリングの集まりです。1つのリングを取り出して考えてみます (Fig.4)。磁場=磁石球 は引力により下向きの力を受けています。フレミング左手の法則の「電流・磁場・力」の力が何か、曖昧だったことが混乱の元でした。力は引力の下方向ではなく、1個の➕にかかる力です。ではその力とはどの向きでしょうか。仮想の1個の➕をモデルにしましょう。

f:id:fanon36:20171204125443p:plain Fig.4 リングの中の+が主語

<2> モデル➕に視点を固定

球が上から落ちてくることは、リングが球に向かって下から上へ動くことと、運動としては同じです。リング右端にいる1個の➕ (Fig.5) に着目し、これを仮想モデル➕にします。このモデル➕はリングの一部ですから、やはり下から上に動きます。➕の移動が電流なので、下から上への電流があるのと同じです(電流①)。

f:id:fanon36:20171204125514p:plain  Fig.5 +の移動の集合が電流

 <3> 電流①を含むフレミング左手

電流①と磁場が作る力がモデル➕に働く方向をフレミング左手 (1回目) で見ます(ややこしいのは電流①とモデル➕は一人二役であることです)。すると力の方向は手前から奥への向きだとわかります (Fig.6の力①)。力① の作用でモデル➕は手前から奥へ移動します。この➕の移動が、また電流です(電流②)。

f:id:fanon36:20171204125727p:plain Fig.6 同じ+が電流だったり力の受け手だったりするのでややこしい。

<4> 電流②を含むフレミング左手

電流②がモデル➕自らに発生させる力は、フレミング左手 (2回目) によると斜め内側下方です(Fig.7の力②)。

 アルミリングが蔵する全ての➕は力②方向へ引っ張られるので全体としてはFig.8のような引っ張られになります。。

f:id:fanon36:20171204125807p:plain Fig.7 f:id:fanon36:20171204125906p:plain Fig.8

 

さぁ、このアルミ壁を引っ張る漏斗状の力が、どうして磁石球の落下をやわらげるのでしょうか?

科学的思考に慣れた人なら、作用反作用の法則とすぐ理解できるでしょう。私は直感的には分かりませんでした。段階的に考えます。

 

<5> 作用反作用

Fig.8の紐を引っ張る手は、力②の集合でした。では力②の源は何でしたでしょう?落下する磁石球です。Fig.8の手は磁石球なのです。ではこの手には、どういう方向の力が働いていますか?引っ張るのが手でなく人だったら、分かりやすいでしょう (Fig.9)。

f:id:fanon36:20171204125955p:plain Fig.9 引っ張り降ろそうとすると、少し浮き上がる

上向きに引っ張りあげられそうになりますね。磁石球はこの状態なのです。

つまりパラシュートをつけているのと同じ (Fig.10) 。ゆっくりユラユラ落ちるわけです。磁力はすごいですね 重力に抗っています。

f:id:fanon36:20171204130044p:plain Fig.10 

 

落下する磁石球の磁力線の方向は一定しませんが、フレミング左手を2回使うので最終的な力の方向はいつも同じです。上の説明はFig.11のAの磁力線を採用しましたが、Bの磁力線でも同じ結果になります。

f:id:fanon36:20171204130125p:plain Fig.11

 

説明だけ聞くと判ったようで、あとで自分でやり直すと全然わかっていない事がわかって面白いですね。ではまた次回。

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