大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

冥王星島8

山裾のあたりは道が古くて入り組んでいる。公道か私道か分からない。いつの間にかよその庭に道が溶け込んでいたりする。地区の中心となる太古の神社は、その屋根はどこからもよく見える。だからと言って直接それを目指しても辿り着けるものではない。
 

少し離れた川沿いの国道も同様だ。川に出ればいいだけなのでたやすくたどり着けそうに思うが、実は直接川に出られる公道は少ない。ちえこのばあちゃんちは川沿いに出るときに使われる。勝手口脇の塀に沿ってするりと入り、庭を横切って土手の階段を上ると近道なのだ。そのかわりに、ばあちゃんに話しかけられる。ばあちゃんはそれが楽しみだ。宮崎さんの犬はあんなに甘やかされて大丈夫なのか とよその犬の行く末まで心配する。それに似て、九州に転勤が決まったちえこも、両親が相次いで死んでから一緒だったばあちゃんを置いていくのは心配だ。一方15歳から腎臓を悪くしたちえこは心配されることの窮屈さと、逆の効用を知っていた。己を心配するようではおしまいだ。にんげん、他人の心配をしているくらいが、空っぽになってて丁度いい。ましてや犬公ならよほど大丈夫なのだ。