大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

冥王星島2

さとこは杵島さんのところで通いの女中のようなことをしている。高校を出てから内地の学校に行った。勉強内容が難しくてついていけず、お盆前に学校をやめて帰ってきた。お婆さんは梅雨頃から病気で入院している。さとこの母親は毎朝さとこを杵島家へ送り出してから病院へお婆さんを見に行く。

小柄で大人しく似た二人は今朝もめいめい実直に出ていった。平屋の家は昼間は無人になる。日陰で老犬のマルが番をしている。庭先で寝たり、椿の生垣から黒い鼻を出して道行く人を覗いたりしている。マルはさとこが小学校に上がった時分からいる長生きで、色々趣味がある。無人の家が静かすぎる午後に、犬が覗いて行く垣根にて何事もない昼。と心の中で呟く。マルが置かれている状況とは主客が逆なのだが、そこは賢くても犬。しかしあえて間違いを指摘されることもない。マルは自分が随分賢いことも、時々間違ってることも一生知らない。