大阪合気道自主稽古会

流派を問わない合気道の稽古場です。小説、漫画、などが混在しています。稽古記録はタグをご利用ください。出典明記があれば図の引用については問い合わせ不要です。。

書き物

冥王星島16

先輩の帰郷 (下)その家は灯りがついていなかった。仕事から帰っていないのだろう。西の空の朱味はとうに消え去りまるで深夜の暗さではあるが、時刻はまだ6時にもなってない。誰もが休みになる本物の祭と違い今日は平日だし、しかも祭が近づいてきてその人が…

冥王星島14

先輩の帰郷 (上)冬に最大のお祭りがある。夏祭りでも秋祭りでもない。それは年の押し迫った頃だ。奇祭というほどではないが、その日は仕事も学校も休みになる一番の関心ごとだ。しかしここ、丹前町では事情が違う。

冥王星島13

夜中よく目がさめる。随分たったかと思うのにラジオ番組の進み具合からすると数分寝ただけだった。不眠症とは思わない。子供の頃からそうなので、作にとってはこれが夜というものだった。 夜半、意識の焦点は変容する。囚われることはない。毎回 夜が明け闇…

冥王星島12

コロ太は君枝の店で分けてもらったおかずを弁当にしてブラブラ揺らせながら、大粒の白砂が散らばる舗装道路を歩いている。サンダルが砂でちくちく心地良い。海が近い9月の午後4時。

冥王星島11

灰色で表面がごりごりしているブロック塀に、ちょうど目の高さに蝉の抜け殻がとまっていた。火曜日の夕方に秋が来た、と思ったくらいだから、随分長く引っかかっている。体が中で溶けてまた変わっていくのはどんな気持ちだったろう。その夜 杵島篤子は薄い夏…

冥王星島10

冥王星島10 中学校でさちは毎日下駄箱の上に乗っていた。 下駄箱と天井の間のスペースは身を屈めてやっといられるくらいで、ちょうどよい。8時40分に本鈴が鳴って担任の山賀先生が玄関を通って行く時、足をとめないまま下駄箱の上のサチを目で確認する。さち…

冥王星島9

さんぞうが犬のヒロシをつれて半分木陰になっている石の階段を降りてきた。図書館で意地悪をされ本を借りずに飛び出して来た。ちょうどまひるで暑かった。この階段は寺を抜けて家に帰る近道だった。ところが階段が本堂の裏から敷地に入る境の石垣の上に、境…

冥王星島8

山裾のあたりは道が古くて入り組んでいる。公道か私道か分からない。いつの間にかよその庭に道が溶け込んでいたりする。地区の中心となる太古の神社は、その屋根はどこからもよく見える。だからと言って直接それを目指しても辿り着けるものではない。 少し離…

冥王星島6

低い山の中腹までは人家がある。その社員寮は高い所にあるので、周りの建物はまばらで空き家も多い。 ピンク色のようなクリーム色のような、三階建てのコンクリートが木々に隠れている。一階は葉っぱに遮られて路地からは見えないが、二階と三階の手すりには…

地中海家族のお弁当

浜辺に出る幅の広い階段は木とコンクリートでできている。木の部分は明らかにその上に座ったり寛いだりすることを予想されたデザインだったので、行儀が悪いかもという抵抗感なく階段でのびのびできた。二段下に3人が座っている。

冥王星島5

本島を朝一番に船が出るのは7時前だ。こちらの港には7時38分に着岸する。階田さんの婆さんは新聞と小物を売店に運ぶために、本島から毎朝やってくる。婆さんは売店に品物を置くと、東の浜を手早くパトロールして、岬の突端にある染野の庭先に来るのが8時24分…

冥王星島4

近所の藪医者に言われて大きい病院を訪ねて来た。藪医者は病院で見せる手紙を書いて彼に渡したとき、わたたにがそれをちゃんとポケットに入れるのをじっと見張った。それで彼は、あ、これは捨てたりせずに本当に病院へ行かきゃならんのだな、と分かった。船…

冥王星島3

オオタニワタリは 大人の肘から先ほどもある大きな薄い葉で両端がクルクル巻いて繁る。刻んで炒めれば全部食べられる。硬いわりにあくがない。春から夏の終わりまでは若芽が大量に取れるのでわざわざ硬い葉を食べることは少ない。若芽は柔らかくほとんど生で…

冥王星島2

さとこは杵島さんのところで通いの女中のようなことをしている。高校を出てから内地の学校に行った。勉強内容が難しくてついていけず、お盆前に学校をやめて帰ってきた。お婆さんは梅雨頃から病気で入院している。さとこの母親は毎朝さとこを杵島家へ送り出…

冥王星島1

まだ薄暗いうちに目が覚めた。昨夜にみんなでスイカをたくさん食べたからだと思った。居間の東に位置する自分の部屋は丸くて狭い。ドアは プールのシャワールームのみたいに白くて薄い金属製だから、気を付けて開けても カン・カチャ と小さく鳴る。